研究課題/領域番号 |
25750012
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
鈴木 奈穂美 専修大学, 経済学部, 准教授 (10386302)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 介護者支援 / ポスト福祉国家 / 準市場化 / アウトリーチ・サービス |
研究実績の概要 |
2018年度は、1)ポスト福祉国家システムのもとで、介護者支援サービスに関心が集まるようになった背景とは何か、2)介護者の生活支援サービスの1つである「アウトリーチ・サービス・モデル」とはどのようなサービスなのかという2点を中心に研究を進めた。 1)日本では1990年代の社会福祉基礎構造改革を経て、介護保険制度が成立した。介護保険制度は、「介護の社会化」を進めるために創設され、家族介護者(介護を必要としている者に対し、直接的な身体介助などの介護をおこなっている家族のこと)の負担軽減もその目的にあった。この制度には、利用者の尊厳と自己決定権を保障するため、「選択」「契約」といった従来の社会福祉サービスの供給・利用システムにはなかった新たな理念が盛り込まれた。しかし、社会サービスの利用が必要であるにもかかわらず、そのことに無自覚であったり、サービスの利用を拒否するバルネラブルな個人が存在し、社会サービスにつながらないケースがある。そのため、寄り添いながらの自立支援(伴走型支援)の必要性が増し、社会政策分野の新領域(社会的包摂施策)として拡大している。介護者支援施策も、社会的排除/社会的包摂の枠組みの中で捉えることが出来よう。 2)介護者支援サービスのうち、諸外国では家庭訪問型支援や地域づくり型支援の重要性が指摘されていることから、「アウトリーチ・サービス・モデル」の理論的枠組みを作成し、日本で家族介護者向けアウトリーチ・サービスの分析をおこなった。まず、アウトリーチというサービス・モデルの定義の明確にするため、先行研究を分析し、アウトリーチ・サービスを、対象、サービス提供主体、役割・機能別に目的を考察し、定義を導出した。また、アウトリーチ・サービスを適切に機能するためには、その前提条件となる基盤整備についても考察した。その上で、岩手県花巻市の取り組みについて分析をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究者には未就学児の子がいる。その子が通所していた保育所は小規模保育所のため、2019年3月末に退所する必要であった。当該研究者の住まいのある自治体は待機児童が大変多く、2018年度は、2019年度以降の保育所・幼稚園探しに時間がとられてしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、家族介護者の生活実態と必要な支援内容に関する調査の実施と、これまでの研究成果の発表を行っていく。 研究計画に予定していた、1)新聞記事の分析と2)海外の実態調査だが、大きな見直しを迫られた。1)については、アルバイトの採用・管理を行うことが困難な状況から脱することが出来ず、その規模を大幅に縮小、2)についても、子育てのため、海外渡航は制約があるため、文献を中心とした調査に変更する。それに代わり、家族介護者の実態と必要とされる支援内容を検討するための調査を実施し、当初の研究目的を達成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
7で示した理由から、調査計画の変更を余儀なくされた。 使用計画だが、1)家族介護者の実態把握のための調査・分析費用、2)研究成果の報告のため、中国で開催される国際学会への出張旅費などに利用する予定である。
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