研究課題/領域番号 |
25750022
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
露久保 美夏 お茶の水女子大学, サイエンス&エデュケーションセンター, 講師 (50646924)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 麦飯 / 糖量 / 酵素 / 抗原抗体反応 |
研究実績の概要 |
米と大麦の混炊を行い,大麦のβーアミラーゼの炊飯中の挙動を調べ,米と大麦の混炊における糖生成のメカニズム解明を行った。糖生成に関わる酵素の挙動を把握するため,研究に用いたモチ大麦(モッチリボシ)の内在性デンプン分解酵素について,デンプン加水分解活性およびβーアミラーゼ活性を測定したところ,デンプンか水分解活性は60℃で最高活性を示し,70℃で急激に低下した。βーアミラーゼ活性の測定結果からは,50〜60℃でマルトースの生成が増大することが明らかとなった。これらの結果より,炊飯過程においては,酵素の活性が高くデンプンの糊化も進む60℃付近で糖生成が活発に行われる事が示唆された。また,ウルチ大麦とモチ大麦のβーアミラーゼ活性を比較したところ,モチ大麦の方が活性が高かったことから,米との混炊による相互作用の影響がモチ大麦で大きい事が考えられた。 また,大麦βーアミラーゼの炊飯中の挙動を明らかにするため,所定の温度に達した時点で酵素が米粒,麦粒,炊飯液の何処に存在するかをウエスタンブロット法を用いて調べた。この結果,20℃,1時間の浸漬中に大麦のβーアミラーゼは炊飯液中に溶出して米粒内に移動し,加熱後40℃までは米粒内に留まるが60℃に達すると大部分が炊飯液中に溶出することが明らかとなった。 以上の結果を踏まえ,混炊による糖生成量増加の効果を詳細に明らかにするため,炊飯過程中の液と粒の糖量測定を行ったところ,混炊することによって,大麦のβーアミラーゼがマルトースを生成し,米のαーグルコシダーゼがマルトースを分解し,グルコースを生成するという酵素の相互作用が確認された。これにより,米や大麦の単独炊飯に比べて混炊飯は糖量が増加することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大麦と米の混炊である麦飯において,大麦のβーアミラーゼに注目して糖生成のメカニズムを詳細に解析するという目的に対し,種々の手法を用いてデータを得る事ができ,新規知見の蓄積がなされた。特に,炊飯中の酵素の移動を捉え,これと合わせて糖生成量を測定した事により,多角的な視点からの考察を行うことができ,研究の深化につながった。今後,食味への影響について研究する上で非常に有用な成果が示せたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では食味に影響すると考えられ得る糖生成に注目し,その生成メカニズムや種々の条件下での酵素の挙動等について解析を進めてきた。今後は,これらの糖生成が人間の食味にどのような影響を与えるかについて注目し,官能的により好ましいとされる麦飯の炊飯条件の検討を行うことを計画している。このため,種々の炊飯条件により調製した麦飯を試料として官能評価をおこなうこととする。加えて,粒内に存在する酵素の局在をより詳細に把握するための解析を進め,その研究手法も合わせて新規知見の蓄積を行う。 糖生成のメカニズムを詳細に把握した上で麦飯の食味との関係を明らかにする事が可能となれば,今後の大麦の利用拡充に寄与する事が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行するにあたり,当初の計画よりも詳細な検討を行うことにしたため時間を要する実験が生じた。そのため,当初予定していた試薬や器具類の消耗が計画より少なかった事が理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
麦飯の成分分析,官能評価等の実施に必要な試薬等の購入及び器具類の購入を行う。その他,研究成果の学術誌掲載,学会発表の際の費用として使用する。
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