研究課題/領域番号 |
25750023
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
小林 征洋 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (30511753)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | パルブアルブミン / アレルゲン / 魚類 / 食物アレルギー |
研究概要 |
魚類アレルギーと診断された13名について精製マサバパルブアルブミン(PA)のIgE反応性を調べたところ、7名がIgE陽性を示した。そこで、非加熱および20℃~140℃で10分間加熱したマサバ抽出液を調製し、上記7名の抽出液に対するIgE反応性を調べた。その結果、温度依存的にIgE反応性が低下し、この低下はPAの熱変性に起因すると考えられた。 NaCl処理した魚肉中PAに対する立体構造認識抗体の反応性は上昇したが、一次構造認識抗体の反応性は変化しなかった。エタノール処理はPAに対する反応性を若干低下させた。グルコース処理はPAの反応性に影響を与えなかった。酢酸処理した魚肉中PAに対しては、いずれの抗体も反応性が著しく低下した。これらのことから、酢酸がPAを変性させてアレルゲン性を低減できると予想された。しかし、食塩を添加して処理を行うと低減効果は弱くなった。100℃処理による検討では、PAに対する一次抗体認識抗体の反応性は変化しなかったが、立体構造認識抗体の反応性は大きく低下した。また、この低減効果は食塩を添加してもほとんど変化しなかった。さらに、患者血中IgEの反応性を調べたところ、320分間の加熱処理はPAのIgE反応性を完全に消失させ、食塩を添加しても低減効果は変化しなかった。以上の結果から、加熱処理や食酢処理が有効な低アレルゲン化の手段であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に用いる患者血清は医療機関より提供を受けているが、得られる血清の数には限りがある。当初の予定ではPAを認識する10名以上の患者で解析を行う予定であったが、原因アレルゲンのスクリーニングの結果、7名しか解析に用いることができなかった。当初予定していた各温度帯および時間における1)PAの一次構造認を認識する抗体を用いるウエスタンブロッティングによる加熱抽出液中のPAの存在の確認、および2)PAの立体構造を認識する抗体を用いるウエスタンブロッティングによる加熱抽出液中のパルブアルブミンの立体構造変化の有無、については行わなかったものの、平成27年度に行う予定であった各種調味料処理および100℃加熱がPAのIgE反応性におよぼす影響については前倒しをして行った。研究の順番が入れ替わっただけであり、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた上記1)および2)を行わなかったので、平成26年度はこれらをマサバについて実験を行う。また、使用する一次構造認識抗体が確かに一次構造を認識していることの確証を得るため、マサバPAの全一次構造を網羅する15残基のオーバーラップペプチドを作製して抗体の反応性を調べ、一次構造認識抗体のエピトープを決定する。また、PAの立体構造はCa2+の有無で変化することが分かっているが、使用している立体構造認識抗体の反応性がCa2+依存的であることを確認する。また、加熱による構造変化を調べるために未変性PAの精製法の確立に努める。平成27年度は、上記1)および2)を10魚種について行う。前年度に精製した未変性PAを加熱処理し、蛍光アミノ酸の蛍光スペクトルを調べることにより、加熱処理が立体構造を変化させている証拠を得る。
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