研究課題/領域番号 |
25750023
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
小林 征洋 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (30511753)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | パルブアルブミン / 魚類 / アレルゲン / 食物アレルギー |
研究実績の概要 |
前年度の研究では100℃で320分間の加熱が患者血清の反応性を完全に消失させたものの、抽出液中にパルブアルブミンが可溶化していないことが判明したため、加熱および抽出方法を再検討し、パルブアルブミンが可溶化している抽出液の調整方法を確立した。この方法を用いて、マサバ魚肉1 gを100℃で5分から320分間加熱を行った後に抽出液を調製し、パルブアルブミンの立体構造を認識する抗体および魚類アレルギー患者の血清との反応性を調べた。立体構造認識抗体の反応性は160分間でほぼ消失したものの、患者血清の反応性を完全に消失するには320分間の加熱が必要であることが明らかとなった。調理時を想定し、魚肉フィレを常圧加熱および加圧加熱(120℃)で蒸し処理した後に抽出液を調製し、立体構造認識抗体および患者血清との反応性を調べた。立体構造認識抗体および患者血清のいずれも50分間の加熱で反応性が完全に消失した。また、フィレの中心温度を調べたところ、蒸し処理では120℃に達するまでに40分間かかることが分かった。次に未変性パルブアルブミンの精製法を確立し、未変性パルブアルブミンと100℃で60分間加熱処理をしたパルブアルブミンに対してフェニルアラニン由来の蛍光発光を調べた。その結果、加熱処理したパルブアルブミンは未処理のパルブアルブミンに比べて蛍光強度が2倍に上昇し、加熱によりタンパク質変性が起きていることが示唆された。続いて、10種魚類の魚肉1 gを100℃および120℃で60分間加熱した後に抽出液を調整し、立体構造認識抗体および患者血清との反応性を調べた。その結果、100℃加熱は立体構造認識抗体および患者血清の反応性を低下させたが、多くの魚種で反応性は完全には低減しなかった。一方、120℃で加熱した魚肉抽出液は全ての魚種で立体構造認識抗体および患者血清との反応性を完全に低減できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り進展しており、小スケールにおけるパルブアルブミンのアレルゲン性の低減が加熱で可能なこと、それが立体構造変性に起因する可能性があることを明らかにできた。また、未変性パルブアルブミンの精製方法も確立することができ、蛍光発光によるパルブアルブミンのタンパク質変性を確認することにも成功した。研究計画全体の8割程度を達成しており、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
未変性パルブアルブミンの熱変性を蛍光発光の変化から確認する実験は100℃で10分加熱の条件でしか行っていない。この加熱条件はアレルゲン性を完全に低減できないので、加熱温度の検討を行う必要がある。そこで、40℃~140℃におけるパルブアルブミンの蛍光発光を調べ、加熱不可に応じて熱変性が進むことを確認する。また、現在10魚種について120℃、60分間加熱がアレルゲン性の低減に有効であることが判明したので、さらに10魚種を追加して同様の実験を行い、いずれの魚種でも120℃、60分間加熱がアレルゲン性の低減のために有効な普遍的な方法であることを確認する。
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