研究概要 |
嚥下調整食として出回っているゼリー状の食事は、口腔内で舌と口蓋により圧縮・破断した時に水分があふれ出るものも見られる。これは嚥下障害者にとっては誤嚥を引き起こすリスクが非常に高く危険であるが、これまでの嚥下食の基準では物性のみが先行し、このような離水が考慮されることは少なかった。そのため、今後、嚥下食の基準に離水率を併記することが重要であると考えられる。 これまで我々は、ゲル状食品の離水率を、離水を濾紙に吸着させることによって評価してきた(神野典子:嚥下食ピラミッドによるレベル別市販食品250, 栢下淳編, 医歯薬出版株式会社, 2008/山縣誉志江,他:日摂食嚥下リハ会誌, 2010)。これらの方法では、ゲルの内部からあふれ出る水分が適切に評価できているのかが不明である。本年度は、表面離水の測定方法の改良および内部離水の測定方法の確立を行った。 まず、食感が異なるゲルを作製するため、2種類のゲル化剤の選定および濃度の決定を行った。これらの試料を用いて官能評価を行い、離水率の高いと思う順位を評価させた。官能評価パネルは本学学生71名とした。次に、これらの表面離水を測定するための方法として、クリープメータを、内部離水を測定するための方法として、(1)クリープメータを使用して試料を圧縮する場合、(2)遠心分離を行い水分を分離させる場合を検討し、それぞれで条件を変化させ評価を行った。これらの結果、最もヒトの官能評価結果に近い測定方法がわかった。
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