嚥下障害者にとって、食品中からあふれ出る離水は誤嚥を引き起こすリスクが非常に高く危険である。しかし、これまでの嚥下調整食の基準では物性のみが先行し、このような離水が客観的な数値を用いて考慮されることはほとんどなかった。そのため、嚥下調整食の基準に離水率を併記することが重要であると考えられる。本研究では、ゼリー状食品の表面離水および押しつぶしの際に生じる内部離水の測定方法の確立を行った。食感が異なるゲル8種類を用いて学生71名を対象に官能評価を行い、離水率の高いと思う順を評価させた。これらの試料の表面離水および内部離水を複数の方法で評価し、最もヒトの官能評価に近い結果が得られる方法を検討した。その結果、20メッシュのふるいを用い、濾紙法により表面離水を測定し、クリープメータに直径55mmの円柱状プランジャーを装着し、速度1mm/secで試料の93%を圧縮する方法により内部離水を測定するのが適切と考えられた。さらに、検討した方法により表面離水および内部離水の異なるゲル8種類を用い、試料がどの程度の重症度の嚥下障害者に提供可能か、医療従事者87名に官能評価を行った。その結果、重度嚥下障害者に適切な表面離水および内部離水の範囲がわかった。重度嚥下障害者に適切な離水率に該当する市販製品は現状では少ない。そのため、今後、特別用途食品えん下困難者用食品の許可基準などへの離水率の導入を検討すべきであると考えられる。
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