本研究は,ヒトの咀嚼過程で形成される咀嚼片と唾液等の凝集物,すなわち食塊について,実験で得られた知見を踏まえながら,その力学的特性を主に数理モデルを用いて明らかにする研究である. 最終年度である平成26年度に関しては,前年度得られたゲル状食品の食塊形成と平均食片サイズおよび咀嚼回数との関連性を踏まえ,食塊形成およびその物性を再現する数理モデルの提案・構築し,それを数値シミュレーションすることで,食塊形成の理論的な理解を目指した.そのような目的に基づいて,本年度の研究を推進した結果、以下のような研究成果が得られた. 1) 食塊の凝集性を評価する際の指標として,食塊の空隙率に着目し,それを評価する数理モデルとして,数理科学の分野で比較的よく知られている空間充填モデルを構築した.具体的には,疑似食塊を構成する食片群のサイズが実験的に与えられた統計分布に従うとして,それを用いてランダムなサイズの食片を生成し,それらをある定められた空間内に,一定の方法で充填することで食塊を再構成した. サイズが従う統計分布を変化させて,食塊を生成する数値シミュレーションを行うことで,空隙率と特に食塊の凝集性に関する知見を得られた.これらの成果に関しては,現在論文として準備中であり,次年度以降に研究発表される予定である.
研究期間全体を通じて,実験的には,ゲル状食品に関する食塊物性の評価を,理論・数値的には,食塊形成の数理モデルの構築が行われた.研究期間全体における,それら成果のまとめは,今後行われる学会および研究集会等で発表することで,その知見を社会に還元する.
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