研究実績の概要 |
食品表示における不確かさを解消することは、食品の安全性を確保するために重要である。本研究では炭酸カルシウム (CaCO3) を対象に、カルシウム及び夾雑物として存在する第2族元素の組成とこれらの安定同位体を、誘導結合プラズマ質量分析装置にて測定することにより、その基原の判別及び当該成分を含んだ食品中からの基原を判別化する方法を確立することを目的とする。 本年度は、以下の 2 項目に関して検討を行った。 1. 試料に含まれる各成分 (Mg, Ca, Sr, Ba) の定量化: 市場流通品CaCO3 21 種を対象に測定を行った結果、Ba (質量数 137) は定量下限値以下だった。Mg (24) は、含有量と基原の違いに傾向はみられなかった。他方、Ca (44) 及び Sr (88) は、前者において生物由来の検体で低値を、後者において海洋産物で高値を示す傾向にあることが明らかとなった。 2. 安定同位体比による基原判別: 検体にほとんど含まれていなかった Ba を除く、Mg (25/26)、Ca (42/44) 及び Sr (87/86) 同位体比について、認証標準物質 (NIST SRM 980、915b、987) を指標に、測定を行った。その結果、Sr 同位体比と基原の違いに傾向はみられなかった。他方、Mg 同位体比は、サンゴ由来の物で高くなる傾向が、Ca 同位体比は、海洋由来の物で低くなる傾向が、それぞれ示された。 上記の結果から、Ca 及び Sr 含有量を指標にすることにより鉱物や化学合成品の物と天然由来の物を分別化できる可能性が、また、Sr 含有量と Ca 同位体比を指標にすることにより、一部の貝殻由来の物を選択的に分別できる可能性が、それぞれ示唆された。 今後、当該製品を含んだ食品の測定を行い、これらの指標を基に判別可能か検討を行う予定である。
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