研究課題
若手研究(B)
メタボリックシンドロームの予防・改善には、食生活の改善すなわち食事療法と運動不足の改善すなわち運動療法をストレスなく、バランス良く行うことが重要であると考えられる。本研究は、実験動物へのストレスが少ない自発的運動を利用した運動療法と、食品由来の機能性成分を利用した食事療法の相加・相乗作用によるメタボリックシンドロームの効率的な予防・改善の評価を行うことを目的とした。まず、培養細胞を用いた食品成分のスクリーニング系の構築を目指し、肝細胞、筋細胞、脂肪細胞を用いて、ポジティブ/ネガティブコントロールに対する各器官の応答性の違いを比較検討し、脂質代謝異常、炎症および酸化ストレスマーカーを改善する食品由来機能性成分のスクリーニングを行った。ポジティブコントロールとして、「食品成分A」を用いた。「食品成分A」は研究代表者がこれまでの研究により、脂質低下作用・糖代謝異常改善作用を有することを明らかにした食品成分である。ポジティブ/ネガティブコントロールとして、「共役リノール酸(CLA)」を用いた。これらを用い、各種細胞の応答性について、細胞毒性および濃度依存性、細胞のOil Red O 染色、細胞および培地中の各種脂質測定、細胞の遺伝子発現量解析、培地中の炎症マーカー測定の項目について評価を行い、スクリーニング系の確立を試みた。その結果、CLAはin vivoでの現象がin vitroでは発揮されず、コントロールとして不適切であった。一方、酵素処理により水溶性を与えた「食品成分A」はいずれの株細胞でも脂質低下作用・炎症抑制作用を発揮した。しかしながら、長時間培養の場合、著しいアポトーシスを誘導したことから、「食品成分A」の処理法、添加濃度などをさらに検討することが、本研究でのスクリーニング系の確立には必須であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
まだ検討の余地はあるものの、in vivoの研究で脂質低下作用や糖代謝異常改善作用などが認められた「食品成分A」が、in vitroの研究でも有効に作用することが明らかとなり、これをさらに発展させることでスクリーニング系を確立できると考えている。また、「食品成分A」は運動療法の評価でもコントロールとして利用することが可能と考えられる。
培養細胞を用いた新たなスクリーニング系の確立を目指しながら、in vivoでの評価を進めていく。具体的には、非運動群(定常状態群)および自発運動群を設定し、さらにそれぞれの群で通常食群、高脂肪食群、通常食+「CLA or 食品成分A」群、高脂肪食+「CLA or 食品成分A」群の4群に分け、短期飼育と長期飼育を行う。自発運動群は毎日、運動量(回転数)を観察する。飼育期間中、呼気ガス測定に よるエネルギー代謝測定を行い、非運動群および自発運動群のエネルギー代謝変動の比較、通常食群、高脂肪食群、通常食+「食品成分A」群、高脂肪食+「食品成分A」群のエネルギー代謝変動の比較を行う。in vitroにおいては、「食品成分A」はネガティブ/ポジティブコントロールとしては不適切であると考えられたが、in vivoでのCLAの作用は明らかであるため、食餌に添加することで対照として用いることとする。さらに、「食品成分A」の処理法、添加濃度などを検討し、スクリーニング系の確立を目指す。
当初、細胞培養試験と並行して、通常マウスおよびノックアウトマウスを用いたin vivo比較試験を行う予定にしていた。しかし、予算の都合上、in vivo試験は通常マウスでの予備試験のみとした。このため、動物代や食餌代、分析試薬代が減り、残額が生じた。次年度の計画と合わせて、初年度に計画していた通常マウスおよびノックアウトマウスを用いたin vivo比較試験を行う。
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大豆タンパク質研究
巻: 15 ページ: 68-71
Endocrinology
巻: 154 ページ: 4305-4315
10.1210/en.2012-2206