研究課題
昨年度までの研究で行った培養細胞によるスクリーニングにより、「食品成分A」が脂質低下作用・炎症抑制作用を発揮することが示されたが、長時間培養で著しいアポトーシスを誘導したことから、その成分の処理方法や添加濃度に課題を残していた。そこで、今年度は培養細胞系での評価を進めるとともに、「食品成分A」が実験動物のエネルギー代謝・糖代謝・脂質代謝に与える影響を評価した。まず、単回投与の影響について検討したが、炭水化物消費・脂肪消費いずれも差はなく、投与後の脂質パラメータ、血糖値にも対照群と実験群に有意差は認められなかった。このことから、「食品成分A」は一時的な摂取で効果を発揮するものではなく、ある程度の摂取期間を要することが明らかとなった。次に、食餌に添加して摂取させたところ、「食品成分A」は短期飼育・長期飼育いずれにおいても炭水化物消費の亢進、血糖値の低下が認められ、糖代謝改善作用を有する可能性が示された。しかしながら、経口グルコース負荷試験による耐糖能評価では群間に差はなかった。従来、耐糖能評価試験として用いられる経口グルコース負荷試験は経時的な尾採血を必要とし、この尾採血がストレスを与え、正確な評価を妨げている可能性がある。そこで、安定同位体13C-グルコース経口投与条件下でのエネルギー代謝測定を行った。この方法では、呼気中に排出される13CO2を検出するため、尾採血を必要とせず、実験動物にストレスを与えないだけでなく、摂取したグルコースの消費についてより明確な測定が可能である。その結果、実験群は対照群と比較して13C/12C比のピークが早く現れ、グルコース処理能力が亢進している可能性が示唆された。また、「食品成分A」は血中、肝臓の脂質パラメータを低下させ、筋肉・脂肪組織の炎症マーカーを低下させた。今後、さらなる飼育試験を行い、より詳細なデータを集めていく予定である。
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