本研究は,メディエーター分子のリゾホスファチジン酸 (LPA)とスフィンゴシン1-リン酸 (S1P)の産生異常をポリフェノール類で是正することで生活習慣病の基盤となる肥満を予防し,抗肥満作用をもつポリフェノールを機能性食品として確立することを目指している.本年度では,まず商業的に入手可能な約20種類のポリフェノール類を用いて細胞内外のLPAとS1Pの生合成に関わる酵素活性を阻害するポリフェノール類のスクリーニングを行った.その結果,スフィンゴシンキナーゼ1(SK1)に対してはケルセチン,ミリセチン,フィセチン,プロピルガレート,ロビネチンおよびルテオリン,クルクミンに,オートタキシ(ATX)に対してはモリン,ミリセチン,フィセチン,レスベラトロール,ルテオリンおよびクルクミンに阻害活性が見られた.SK1あるいはATXに対して比較的強い阻害活性を示したポリフェノール類を未分化のマウス線維芽細胞(3T3-L1細胞)に添加して脂肪細胞に分化させたところ,ケルセチン,フィセチン,レスベラトロール,ルテオリン,あるいはクルクミンを添加した細胞の細胞内トリアシルグリセロール量が減少していた.さらに,ケルセチン,フィセチンおよびレスベラトロールを添加した細胞では,SK1のmRNAレベルには大きな変化はなかったが,脂肪細胞の分化により発現量が上昇する遺伝子群(adiponectin,PPARγおよびaP2)に加えATXのmRNAレベルが大きく低下しており,これらポリフェノールを多く含む食品に抗肥満効果が期待できると考えられた.
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