平成26年度は主に胃腸障害発症メカニズムを解明するため、(1)マウス実験による胃腸炎症の評価と、(2)腸炎ビブリオT3SS1及び、VP1680遺伝子発現制御機構について実験を行った。 (1)マウス実験による胃腸炎症の評価では、腸管ループ試験における強制感染環境下で腸炎ビブリオ感染によって明らかな好中球の遊走を確認することが出来た。さらにこれら好中球では炎症誘導因子のCOX-2の発現が有意に高くなっていることをウエスタンブロッティング、免疫蛍光染色で確認することが出来た。腸管ループ試験ではCOX-2阻害剤を使用することで腸管管腔に貯留する液体量が減少することが明らかとなり、腸炎ビブリオ感染では胃腸炎症が下痢を惹起している可能性が大きいことが示唆された。 (2) 腸炎ビブリオの病原因子の遺伝子発現制御機構については、すでに平成25年度の研究で、菌の細胞への接着とT3SS1遺伝子の発現制御の関連について有効な知見を得て来たが、平成26年度も新たな視点から病原性制御に関する研究を行った。その結果腸炎ビブリオではDNA結合タンパク質である、2つのHUプロテインがT3SS1関連遺伝子の発現制御に機能していることが明らかとなった。本研究も新たな病原性の制御機構を示す結果であり、現在科学雑誌への投稿準備を進めている。
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