研究課題
アンジオテンシンII(Ang II)は、高血圧症や心腎血管疾患の病態に重要な役割を担っている。高血圧症患者では、鉄貯蔵マーカーである血清フェリチン値が高値を示すことが報告されている。我々は前年度に6週齢のC57BL/6Jマウスを用いて、Ang IIを4週間持続投与により高血圧モデルマウスを作成し、肝臓で産生される鉄吸収抑制ホルモンhepcidinの遺伝子発現ならびに血清hepcidin-25濃度が減少することを見出した。また、Ang II投与により鉄の主たる吸収部位である十二指腸における鉄吸収蛋白質divalent metal transporter (DMT1)、ならびにferroportin(FPN)の発現増加と腹腔内マクロファージにおける鉄濃度の増加を認めた。本年度は、十二指腸におけるDMT1の発現上昇機構の解明および腹腔内マクロファージにおける鉄代謝分子機構の解明について検討を行った。十二指腸における転写因子hypoxia-inducible factor-2α(HIF-2α)の遺伝子発現および蛋白質発現はAng II投与により有意に増加しており、オルメサルタン(ARB)投与により上昇は抑制され対照(CONT)群と同程度であった。次に、腹腔内マクロファージにおける鉄排出蛋白質ferroportin(FPN)の発現はAng II群で有意な低下を認め、ARBの投与によりCONT群と同程度に回復した。以上の結果から、十二指腸におけるHIF-2αの増加によりDMT1の発現が上昇し、十二指腸からの鉄吸収量増加が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画で当初掲げた予定項目である、十二指腸における鉄制御関連因子と肝臓ヘプシジンの評価ならびに生体内鉄量変化と腸管鉄吸収変化について確認・明らかにできたため、研究目的は概ね達成した。
今後は、鉄代謝関連蛋白質を調節するIRP (iron regulatory protein)に焦点をあてて解析を行うとともに、培養小腸上皮細胞および培養肝細胞を用いてin vitro研究も併せて行う。
平成26年度に、鉄摂取制限による血圧上昇の抑制効果について明らかにする予定あったが、鉄摂取量と血圧との間に相関したデータが得られなかったため計画を変更し、培養細胞を用いた解析を行うため未使用額が生じた。
培養細胞を用いた解析を次年度に行うこととし、未使用額はその経費にあてることとしたい。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
The Annals Pharmacotherapy
巻: 49(4) ページ: 398-404
10.1177/1060028014566446
European Journal of Nutrition
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1007/s00394-014-0749-1