研究課題
我々はこれまでにC57BL/6Jマウスを用いて、アンジオテンシンII(Ang II)を4週間持続投与により高血圧モデルマウスを作成し、肝臓で産生される鉄吸収抑制ホルモンhepcidinの遺伝子発現ならびに血清hepcidin-25濃度が減少することを見出した。また、Ang II投与により鉄の主たる吸収部位である十二指腸における鉄吸収蛋白質divalent metal transporter (DMT1)、ならびにferroportin(FPN)の発現増加と腹腔内マクロファージにおける鉄濃度の増加を認めた。本年度は、腹腔内マクロファージにおける鉄濃度増加メカニズムについて検討を行った。腹腔内マクロファージにおけるtransferrin receptor 1(TfR1)およびFPNの発現は、Ang II投与により有意な低下を示した。一方、IRP(iron regulatory protein)とIRE (iron responsive element)の結合活性は、Ang II投与により有意に増加しており、オルメサルタン(ARB)投与により増加は抑制され対照群と同程度であった。さらに、鉄貯蔵蛋白質ferritinの発現はAng II群で有意な増加を認め、炎症性M1マクロファージのマーカーであるCD11c,F4/80,MCP-1の遺伝子発現は、Ang II投与により有意に増加しており、この増加はARB投与により対照群と同程度であった。以上の結果から、Ang IIは腹腔内マクロファージにおいて、IRP活性とは異なる作用機序で鉄代謝関連蛋白質の発現を調節している可能性が示唆された。
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Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 38(11) ページ: 1752-1756
10.1248/bpb.b15-00435