研究課題
生活習慣の変化と共に急増している生活習慣病の発症には、様々な原因が報告されている。その最も重要な因子の一つとして食習慣が挙げられる。過剰な食事量、間食、夜食は、代謝性疾患を増悪させる。また、食事内容、特に脂肪の過剰摂取は、エネルギー源として直接脂肪を蓄積するだけでなく、脂肪毒性による膵臓でのインスリン分泌の低下や、肝臓、骨格筋、脂肪組織のインスリン抵抗性を誘導する。さらに脂肪酸組成の違いは、代謝や免疫能に影響を与える。我々は、高脂肪食の脂肪酸組成に注目し、トランス脂肪酸、パルミチン酸、オレイン酸高含有高脂肪食をそれぞれマウスに給餌し、肝臓での発癌の違いについて観察した。その結果トランス脂肪酸高含有高脂肪食で最も高率に肝発癌することが確認できた。さらに、脂肪肝の程度、肝臓の酸化ストレスの産生量、肝線維化が他の高脂肪酸高含有食よりトランス脂肪酸高含有高脂肪食強いことが確認できた。そのメカニズムとして、肝臓での脂肪酸合成に関わるfatty acid synthaseの発現増加と肝臓での脂肪蓄積に関わるGlycerol-3-phosphate acyltransferase1の発現増加がみられ、これらの因子がトランス脂肪酸高含有高脂肪食における脂肪蓄積の原因と考えられた。さらに、酸化ストレス産生のメカニズム解明のために、脂肪酸代謝に注目し実験を行ったところ、β酸化に関わる因子は各脂肪酸群で差はみられなかったが、ω酸化に関わる因子が、高トランス脂肪酸高含有高脂肪食群で亢進していることが確認された。これらの結果から、トランス脂肪酸は、脂肪合成、脂肪蓄積により脂肪肝を悪化させ、さらにω酸化を誘導することにより肝臓内での酸化ストレスを亢進させ、肝線維化、発癌に寄与するという脂肪酸代謝による新規の肝発癌メカニズムを明らかにした。
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Journal of gastroenterology
巻: 50 ページ: 230-237
10.1007/s00535-014-0959-6.
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