研究課題
本研究の目的は、食品ごとのプリン体化合物の腸管吸収や肝臓での尿酸代謝における差異を定量的に解析し、新たな尿酸値上昇リスク評価方法を探ることである。食品中のプリン体化合物は総プリン体量(尿酸換算値)として評価されることが多いが、プリン体化合物の存在様式は核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、プリン塩基と様々であり、腸管での吸収および尿酸への代謝は一様ではないことも考慮すべきである。本年度は、昨年度確立した22種類のプリン体の一斉分析法を用いて、ヒト肝癌由来細胞HepG2細胞を用いたプリン体の代謝動態評価系およびヒト大腸癌由来細胞Caco-2細胞を用いたプリン体の小腸膜透過性評価系を構築した。特に、培養細胞系に含まれる代謝酵素をすばやく失活させ、かつ性質の異なる測定対象を効率よく抽出できる前処理方法について検討を重ね、70%アセトニトリルによる抽出方法による細胞内外のプリン体の一斉モニタリングを可能とした。細胞内へのプリン体取り込みでは、ヌクレオシドであるアデノシンの取り込みがもっとも多く、取り込み後は、アデノシンデアミナーゼによる急速なイノシンへの代謝とサルベージ経路よるATP産生の上昇が認められた。一方で、グアノシンなどのグアニン塩基系の負荷では、グアナーゼおよびキサンチンオキシダーゼによる尿酸への代謝経路が活発であり、これらを多く含む食品の尿酸値上昇への寄与が示唆された。尿酸値上昇リスクが高いとされる食品成分による影響についても評価した結果、プリン体の小腸透過性よりむしろ代謝動態への関与が認められた。また、食品中プリン体のネットワークアプリケーション構築においては、ファイルメーカーにこれまで得られた食品中プリン体含量および食品成分データを入力し、献立に合わせて、材料を選び数量を入力することにより、その献立に含まれる様々な情報を簡単に計算するところまで行えるようになった。
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Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids
巻: 33 ページ: 445-453
10.1080/15257770.2013.863333
巻: 33 ページ: 439-444
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