研究課題/領域番号 |
25750059
|
研究機関 | 山梨学院大学 |
研究代表者 |
名取 貴光 山梨学院大学, 健康栄養学部, 准教授 (00528721)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ヒストン脱アセチル化酵素 / アントシアニジン / 神経保護効果 / 神経突起伸長効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒストン脱アセチル化酵素(Hdac)活性調節作用を指標として、中枢神経機能の回復や神経再生作用を有する食品由来天然成分を見つけ出すことである。これまでに、Hdac活性調節作用を有し、神経突起伸長または神経保護作用を有する分子として、シアニジン、ペオニジン、ペラルゴニジン、マルビジンを見出した。そこで、これら候補物質の中から顕著なHDAC活性阻害を有したアントシアニジンに注目し、神経突起伸長および神経保護作用に対する作用機序に関する検討を行った。各種遺伝子の発現解析には、Real time-PCR及び免疫染色法を用い、HDAC阻害活性の測定には蛍光基質ペプチド法、細胞内ヒストンのアセチル化定量はELISA法を用いた。小胞体ストレスに対する神経保護効果および神経突起伸長作用を示したシアニジンとペオニジンについて、ヒストンのアセチル化を確認したところ、有意に増加していることが確認された。また、このヒストンアセチル化の増加は、Hdac活性化因子であるテオフィリンの添加によりみとめられなくなった。次に、シアニジンとペオニジンの遺伝子発現への影響を検討した。その結果、シアニジンとペオニジンはいずれも細胞死マーカーであるCHOPの発現が減少し、細胞骨格の形成に重要なGAP43の発現が上昇することが明らかとなった。一方、Hdac阻害剤の一部は非ヒストンタンパクである転写因子のアセチル化にも関係していることが知られていたため、各種遺伝子の発現を制御することで知られるp21やp53、p300の発現変化について検討を行ったところ、p53の発現上昇とアセチル化p53の増加がみとめられた。本結果は、シアニジンとペオニジンによる神経保護効果や神経突起伸長作用がHDAC 活性を介したエピジェネティック調節に加えて非ヒストンタンパクの就職による影響を受けている可能性を示唆していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Hdac活性調節作用を有する食品由来の天然成分の中から神経再生(神経突起伸長および神経保護)効果を有する分子を同定することを目的としていた。本年度は、前年度に見出した食品由来のHDAC活性阻害分子であるアントシアニジンの神経保護効果および神経突起伸長作用の分子メカニズムについて検討を行い、そのターゲットとなる遺伝子を明らかとした。今後、本計画を推し進めてマウス脊髄損傷モデルを用いた治療効果の検討と詳細な作用機序の解析を進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、神経保護効果および神経突起伸長作用を発揮する候補分子の詳細な作用機序とマウス脊髄損傷モデルを用いての治療効果の確認を予定している。初代神経細胞培養系を用いて活性調節分子の神経再生調節の分子メカニズムを明らかにするとともに野生型マウスの胸椎レベルの脊髄損傷モデルを作成し、活性分子を髄膜下投与した際の運動機能と感覚機能(BBBスコア、把握テスト、接触テスト)を非投与群と比較モニターすること、また、組織学的解析(5HT染色、BDA染色による皮質脊髄路のトレーシング)を行う計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
試薬消耗品の購入において必要金額を下回ったため次年度へ使用予定を繰り下げたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
試薬消耗品の購入に使用する予定である。
|