研究課題/領域番号 |
25750061
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研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
桑原 晶子 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 講師 (00582602)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 下肢筋力 / サルコペニア |
研究実績の概要 |
当初、健常ボランティアを対象として、核磁気共鳴装置(MRI)による下肢筋肉量の妥当性、ならびに筋肉の質についても調査をする予定であった。しかし、筋肉の質を評価する場合、「筋力」の測定も同時に行うことが必要であることが考えられたため、今回は筋力評価を含む調査を行った。 対象者は、有料老人ホームの入居者で自由歩行の可能な43名(男性11名、女性32名)とした。全身骨格筋率は、生体インピーダンス(BIA)法にて測定した。筋力評価として、下肢筋力測定(大腿四頭筋筋力測定装置による測定)、握力測定を行った。身体機能評価では、SPPB(簡易身体能力バッテリー:バランステスト、歩行テスト、椅子立ち上がりテスト)を実施した。 高齢者のサルコペニアに関する欧州ワーキンググループの報告(EWGSOP)において、歩行速度のカットオフ値が、0.8m/秒とされているため、このカットオフ値に対して、ROC解析を行ったところ、骨格筋率や握力は有意な関係は見られず、下肢筋力では、両下肢共に有意な予測因子であった。身体機能評価のSPPBにおいて、高機能群が56%、中間機能群が27%、低機能群が17%であったため、高機能群を体力維持群、中間機能群と低機能群をあわせて、体力低下群として検討した。その結果、体力維持群は体力低下群に比し、下肢筋力が両下肢で有意に高値を示した。また、全身の骨格筋率は、下肢筋力、身体機能とは有意な関連がなかった。 以上の結果より、下肢筋力は身体機能と密接に関連することが推察される。しかし、現在発表されているサルコペニアの評価法では、全身骨格筋肉量の測定が示されており、下肢筋肉量に特化した評価の重要性が示唆された。また、全身筋肉量であったものの、筋肉量と筋力は必ずしも相関性を持つとは云えず、筋力評価も踏まえて検討を行う必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】にも示した通り、MRIによる下肢筋肉量を測定するにあたって、その妥当性を検討するためには、筋力評価が必要であるとの見解に至った。健常ボランティアを対象としたMRIによる下肢筋肉量測定値の妥当性をより明確なものにするために、予め検討すべき事項であり、かつ今年度の結果より、下肢筋肉量ならびに筋力の評価が重要であることが分かった。まだ、サルコペニアの評価法が確立されていない現状を考慮すると、ほぼ想定された進展状況であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今回の調査では、血中ビタミンD濃度の測定を実施していなかったが、この対象者の残血清を用いて、血中ビタミンD濃度と下肢筋力、身体機能等との相関性を検討する。さらに、26年度に計画していた、研究協力施設に勤務の健康成人30名程度を対象に、MRIを用いた下肢筋力に関係する大腿部~腰部の筋肉量測定、またDXA法による四肢筋肉量の測定を行う。MRI 、DXAの測定当日に採血を実施し、一般生化学検査および血中のビタミンD関連指標の測定、身体計測を行う。併せて対象者の基本情報アンケート、ならびに簡易食事歴法(BDHQ)による食事調査を実施する。MRIでの撮影像を画像解析し、下肢筋肉量と脂肪浸潤度を算出し、DXA法での四肢筋肉量との相関性を検討する。さらに、下肢筋力測定値との関係や、筋力に関わるとされるビタミンDレベルとの関係を調査することで、MRIによる下肢筋肉量測定の有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの達成度」にも示した通り、今回は下肢筋力評価の検討に注力をしたため、血中ビタミンD濃度の測定に至らなかったこと、また、健常ボランティアを用いた検討の方法を再考したため、分析関連費用等が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今回の調査対象者の血中ビタミンD濃度の測定を行うことで血液検査費用が発生する。さらに、健常ボランティアの調査においても、血液検査費用、またMRI、DXA等の測定スタッフ等への支払いも生じるため、請求した金額を計画通り使用する。
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