研究課題/領域番号 |
25750064
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研究機関 | 千里金蘭大学 |
研究代表者 |
小林 優子 千里金蘭大学, 生活科学部, 助教 (10393208)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カルシウム吸収 / 腸管上皮細胞 / Caco-2 / 精油 |
研究実績の概要 |
現代の日本人において、カルシウム摂取の慢性的な不足が問題となっている。本研究では、カルシウム吸収の第一段階をになう腸管上皮細胞を用いて、カルシウム吸収促進効果を簡便に判定するスクリーニング系を構築すること、そしてこの系を利用して、腸管に作用してカルシウム吸収を促進する新たな機能性成分を見出すことを目標としている。 平成29年度は、平成28年度に引き続き、腸管上皮におけるカルシウム吸収経路のひとつである「細胞間輸送経路」の活性化因子を探索するために、腸管上皮培養細胞であるヒト結腸癌由来細胞株Caco-2を用いて、TER(経上皮電気抵抗)値を指標として、TER値を変化させる精油のスクリーニングを行った。TER値は、細胞間隙の透過性の指標となる数値であり、Caco-2細胞を透過性膜を持つインサート上で培養し、測定電極をインサートの内側(管腔側)と下部プレート(基底膜側)に挿入することで測定できる。Caco-2細胞を培養しているインサートの培地に精油サンプルを添加した場合と、添加しない場合とでTER値を比較した。約20種類の精油を対象としてスクリーニングを実施した結果、TER値を低下させる、すなわち細胞間隙の透過性を亢進する可能性がある数種の精油が見出された。あわせて、TER値を低下させる濃度の精油が、Caco-2細胞の生存に影響を与えないかどうかをMTT法により検証した。さらに、TERとは別に、細胞間隙の透過性の指標となる蛍光色素であるルシファーイエローの透過量を蛍光プレートリーダーにより測定することによってスクリーニングを行う系の開発を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の研究実施計画と照らし合わせると、腸管上皮培養細胞を用いた細胞間輸送経路活性化因子のスクリーニング系の開発は、精油サンプルを用いたスクリーニングが進んでいることから、おおむね順調に進んでいるといえる。しかしながら、もうひとつの目標である経細胞輸送経路活性化因子のスクリーニング系の開発については、使用予定であった蛍光プレートリーダーが平成28年度に故障し、新規に購入した蛍光プレートリーダーの納品が平成29年度途中まで遅れたため、本格的な測定の開始に至っていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に引き続き、カルシウムの細胞間輸送経路活性化因子のスクリーニングを進める。細胞間隙の透過性は、蛍光色素の透過量を指標にすることによっても測定できるため、TER値とあわせて、蛍光色素透過量の測定を順次行う。細胞間隙の透過性を亢進する可能性が推定された精油については、Caco-2細胞に対する作用メカニズムを検討する。具体的には、活性型ビタミンDが細胞間輸送経路を調節してカルシウム吸収を促進する際に発現量が変化すると報告されている、クローディンやカドヘリンなどのタイトジャンクションを構成するタンパク質の発現について解析する。また、蛍光測定による細胞内カルシウム濃度変化を指標としたスクリーニング系の条件設定も引き続き行い、カルシウムの経細胞輸送経路活性化因子の探索も進める。有効な精油が見つかれば、細胞内でカルシウム輸送に関連する遺伝子やタンパク質にどのような影響を与えるのかを解析する。上記の実験により、カルシウム吸収促進効果が見られた精油については、主要成分として報告されている化合物を単独で用いて同様のスクリーニング実験を実施し、有効成分の特定を進める。 以上の実験から得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、平成29年度に購入したプレートリーダーの納品時期が遅れ、そのぶん実験の回数が減ったため、消耗品の購入量が少なかったためである。 次年度使用額は、抗体などの試薬、細胞培養用プラスチック器具、細胞培養用試薬、カルシウム蛍光指示薬などの購入に使用する予定である。
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