本研究では、腸管上皮培養細胞を用いて、カルシウム吸収促進効果を簡便に判定するスクリーニング系を構築すること、そしてこの系を利用して、腸管に作用してカルシウム吸収を促進する新たな機能性成分を見出すことを目標としている。 平成30年度は、平成29年度に引き続き、腸管上皮におけるカルシウム吸収経路のひとつである「細胞間輸送経路」の調節因子を探索するために、腸管上皮培養細胞株であるCaco-2細胞を用いて、TER(経上皮電気抵抗)値を指標として、TER値を変化させる精油のスクリーニングを行った。TER値は、細胞間隙の透過性の指標となる数値である。Caco-2細胞の培地に精油を添加した場合と、添加しない場合とでTER値を比較するスクリーニングを実施した結果、TER値を低下させる、すなわち細胞間隙の透過性を亢進する可能性がある数種の精油が見出された。一方で、TER値を上昇させる、すなわち細胞間隙の透過性を低下させる精油も見出された。これらの、細胞間隙の透過性に影響を与える精油について解析を進めたところ、サンダルウッド精油がTER値を上昇させる強い効果を持っていることが明らかになった。サンダルウッド精油の作用機序について調べた結果、タイトジャンクションを構成するタンパク質であるクローディン4の発現を増加させることで、細胞間隙の透過性を抑制している可能性を示す結果が得られた。 また、TERとは別に、細胞間隙の透過性の指標となる蛍光色素であるルシファーイエローの透過量を蛍光プレートリーダーにより測定することによってスクリーニングを行う系の評価、ならびに細胞内カルシウム濃度変化を指標としたスクリーニング系の検討を行った。
|