分枝鎖アミノ酸(BCAA)は運動時に付加することで肝臓グリコーゲンの利用を抑える効果や、運動による筋肉障害の予防効果だけではなく、肝不全に合併する肝性脳症を改善する効果など、既に効果や安全性についてヒトや動物を対象として多くの報告がある。しかし、アミノ酸代謝に関係する酵素の補酵素として重要であるビタミンB6(B6)の欠乏状態でBCAAを添加すると、毎回半数のラットの肝臓に脂質の異常蓄積を認めた。最終年度は、2年間の実験結果を元に、B6欠乏状態でBCAAを添加し、自発回転運動を行わせた際のラットの生体への影響について、より詳細な検討を行うこととした。 摂食量については運動の有無ならびBCAA添加の有無による差は見られなかった。しかし、最終体重については、安静群に比べ運動群で有意に低下をしていた。安静群、運動群ともにB6欠乏食群とB6欠乏食下BCAAを添加した群との間に有意差が認められなかったことから、BCAA添加の影響ではなく、運動による影響であると考えられた。体重100gあたりの臓器重量では、副睾丸周囲脂肪組織ならびに腎周囲脂肪組織が安静群に比べ運動群で有意に低下していた。一方、腓腹筋については、安静群に比べ運動群で有意に増加をしていた。しかし、いずれにおいてもBCAA添加の有無による差はなかった。また、血漿中のトリアシルグリセロール含量は安静群に比べ運動群で有意に低下をしていた。肝臓中のトリアシルグリセロール含量については、B6欠乏食の安静群と運動群間ならびにB6欠乏食下BCAAを添加した安静群と運動群の間に有意差は認められなかった。
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