本研究では,経験の浅い教師が自閉症者の行動を行動要因の観点で観察し,行動要 因に関連する気づき獲得の促進を目的とした研修パッケージの開発を行った.研修パッケージの開発にあたり,まず既存のケース会議支援を目的とした動画アノテーションシステムを使用して,特別支援学校における研修内でシステムを実際に使用する際に発生する問題点について調査を実施した。結果,既存のシステムは動画を閲覧しながら動画アノテーションを挿入する作業に負荷がかかる点が示唆された。そのため,これらの負荷について軽減する機能について検討した。 解決手法として,当初複数個のアノテーションをテンプレートとして準備することが負荷軽減につながると仮説を立て,調査を複数回実施した。しかし,テンプレートからアノテーションを選択する際にかかる負荷が大きく,結果として負荷の軽減には至らなかった。そこで,アノテーションのテンプレートを直接動画アノテーションに反映させるのではなく,「いいね!」「イライラ…」の2種類で構成される感情アノテーション機能を用いてマーキング作業を実施した後,従来手法で動画アノテーションを挿入することで,アノテーションを挿入する際の視点が焦点化される点や,他者との比較が容易になる点が示唆された。 そこで,感情アノテーション機能について評価を実施したうえで,本機能をシステムに追加実装し,教育機関およびそれに准ずる組織において複数回適用した。結果,感情アノテーションの挿入作業を個別に実施後,他社の感情アノテーションを比較参照したうえで,共同でアノテーションを挿入する作業が有用である点が示唆された。この結果を整理し,研修パッケージを整理したうえで,開発アプリケーションとともにWeb サイトに公開した。
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