研究課題/領域番号 |
25750095
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研究機関 | 木更津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大枝 真一 木更津工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80390417)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教育データマイニング / EDM / NMF / BMF / 行列因子分解 / 時系列データ解析 / Knowledge Tracing / 隠れマルコフモデル |
研究実績の概要 |
近年,実用的なITS(Intelligent Tutoring Systems)が普及し,教育現場でeラーニングが活用されている.ITSを用いた場合,学生の学習過程や試験結果をデータとして保存することが容易になる.EDM(Educational Data Mining)では,これら膨大な教育関連のデータから,如何に意味のある情報を抜き出すかが焦点となる研究分野でありる. 本研究では,試験結果データから学習者の潜在的なスキル習得過程を可視化することが目的である.先行研究では,試験結果からNMF(Non-negative Matrix Factorization)を用いてQ-matrixを抽出する試みが行われている.Q-matrixとは設問とスキルの関係を表した行列である.しかしながら,先行研究では学習者のスキル習得の時間変化を考慮していなかった.教育過程による学習効果をより深く理解するためには,時間とともにどのように潜在的にスキルが習得されていくか解析することが非常に重要である. そこで,NMFをオンライン化することにより,蓄積された試験結果からQ-matrixを抽出するとともに,時間変化する学習者の潜在スキル状態も同時に抽出する手法の提案を行った.また,論理値で構成される行列を因子分解するBMF(Boolean Matrix Factorization)とNMFとの抽出結果の比較を行った.計算機実験の結果,学習初期から終期の試験結果から学習者の潜在スキルの習得過程を可視化することが可能であることがわかった. さらに,実際のITSから時系列試験結果行列を集積するための手法を考案し,データ欠損のある行列に対応するためのNMFにより,Q-matrixの自動抽出とスキル修得過程の可視化に成功した.また,隠れマルコフモデルによってユーザのスキル状態の推定を行う研究に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費の申請書での計画通り,研究を遂行できていると考えている. 先行研究では,時系列変化する試験結果データによって,Q-matrixが変化していた.しかしながら,設問とスキルの関係は時間変化しないため,一意にQ-matrixを自動抽出する必要があった.国際会議EDM2013で発表した正則化項付きオンラインNMFは正にこれを達成している.一方,本手法は実際のITSで蓄積された試験結果データに対しては適用が難しかった.なぜならば,ITSを利用する学習者の時間軸のずれがあるため,新たなデータ集積方法が必要であり,さらに集積後の時系列試験結果行列にも欠測があるためである.そこで,これらを解決する手法をEDM2014で発表した.さらに,Knowledge Tracingと呼ばれる隠れマルコフモデルを用いてユーザのスキル状態を推定し,設問に正解するか不正解かを判定する手法の研究に着手した. これらの成果は,国際会議2件,国内の研究会で8件の業績があり,これらのことから概ね順調であるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの手法により,試験結果データからQ-matrixの抽出と,学習者のスキル習得過程の可視化を行うことができるようになった.そこで,今年度は,実際のデータに対してこれまでの提案手法を適用し,有効性の検証を行う.実データはある企業でのITSによって取得された530万レコード,57000ユーザの大規模データである.したがって,提案手法が大規模データに適用できるように手法の改良を行う. さらに,Q-matrixは設問とスキルの関係を表すことはできるが,スキル間の構造までは扱うことができなかった.そこで,スキル構造を考慮した手法の考案を行う予定である.
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