研究課題/領域番号 |
25750102
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田中 克典 弘前大学, 人文学部, 特任助教 (00450213)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 育種学 / 遺伝的多様性 / ウリ / 考古学 / 選抜 / 種子遺存体 / DNAマーカー / メロン |
研究概要 |
申請者は作物に選抜が加えられたことを解明するために,メロン仲間の種子遺存体に適用できる核ゲノムのDNAマーカーを開発した.先の科学研究費「若手B」(以下,「前科研費研究」とする.)ではランダムマーカーに由来するDNA配列を解読し,系統解析のために8セットのプライマー(DNAマーカー)を設計した.本年度は,これらを用いて現生メロン251系統を系統解析した.この結果は,現生メロンが大きく2つに分けられること,日本に固有のマクワウリとシロウリが幾つかのグループに分けられることがわかった.また,DNAデータベースより取得した核ゲノムの遺伝子内および遺伝子間の領域について細胞質型の遺伝的変異をカバーする8系統ほどのメロンについて塩基配列を解読し配列変異を特定した.これらの変異はDNAマーカーへ変換済であり,現在,その特性を先のメロン251系統を用いて解析している.分析結果は遺存体分析のバックデータとして利用する予定である.現在,申請者はDNAマーカーを用いてメロン種子遺存体(鹿田遺跡出土)を解析しており,成果は次年度,日本育種学会にて公開を検討している. また,前科研費研究で得られた成果を,国際古民族植物学会(6月)にて公開したことで,結果の考察のために現生メロンにおける種子サイズが必要であることがわかった.そこで, 135系統の現生メロンの種子(13,535粒)についてサイズを調査した.結果とこれまでの成果を統合した論文は,『Annals of Botany』誌にて査読中である. 本年度,前科研費研究のうち,現生メロンの配列変異に係る成果が『Breeding Science』誌(日本育種学会出版)から公開されたと共に,学会論文賞を頂いた.また,遺存体のDNA分析の抽出手法や注意点をまとめた内容を共著で国内および海外向けへ公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において,研究申請時の計画は先に開発した核ゲノムのDNAマーカーで現生メロンと種子遺存体を系統解析すること,ならびに新規のDNAマーカーを設計することと成果を公開することであった. 解析では前科研費研究で開発された核ゲノムマーカーで種子遺存体の解析を進めており,順調に結果を得ている.新たに設計された核ゲノムマーカーは特性評価を行っており,次年度,種子遺存体へ適用できる予定である.特筆すべきことは,結果の考察に向けて現生メロンの種子サイズデータを調査できたことである.この調査結果が種子遺存体分析のバックデータとなるので,調査により,研究の基盤が整うとともに,学術誌へ投稿したことで成果公開につなげることができた.成果公開では,海外での国際学会にて発表を行うとともに,種子遺存体のDNA分析について抽出手法や注意点を書籍にて紹介したことで,分析の普及に努めることができた. 故に,研究は解析と発表において計画を順調に達成していると,判断された.
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今後の研究の推進方策 |
次年度では開発したDNAマーカーで現生メロンや種子遺存体を系統解析することに主眼を置いている.しかしながら,近年,メロンにおいてゲノム解析が進み(Rodriguez-Moreno et al. 2011, Garcia-Mas et al. 2012他),マーカー開発がしやすくなっている.そこで,引続き,DNAマーカーの開発は進める.マーカーの開発は,核ゲノムに重点を置く. 次年度において,現生メロンおよびメロン種子遺存体の利用許可は,それぞれの資料管理者である加藤 鎌司 氏(岡山大学大学院教授)および山本 悦世 氏(岡山大学埋蔵文化財調査研究センター教授)よりいただいているので,本年度と同じ材料を用いて系統解析を行うことができる.また,種子遺存体のDNA分析は,外部から異物混入による汚染を避けるために,特別な施設で行わなければならない.弘前大学人文学部では遺存体のDNA分析が行える施設が完備されている.管理者である上條 信彦 氏(弘前大学人文学部准教授)から本研究に係る利用に了承を頂いているので,引続き種子遺存体のDNA分析は可能である.
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