膠は接着剤として古くから文化財に利用されてきた素材の一つである。従って、膠の原料動物種が明らかになれば、古代の動物利用や技術に関する知見が得られる可能性がある。しかしながら、数百年から数千年の間に生じるタンパク質分解や不純物混入のため、古代の試料から正確な情報を抽出することは難しい。本研究では、ナノ液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析法を適用することで古代の試料に残存する膠を特定することが可能であることを見出した。本法により、約4400年前にエジプトで製作された壁画や約1800年前のローマ期エジプトで製作された三連祭壇画などからウシ由来膠を検出することに成功した。
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