研究課題/領域番号 |
25750106
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
菅原 滋 科学警察研究所, 法科学第四部, 主任研究官 (60356160)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 広視野中赤外分光イメージング / インク / 紙 / 法科学 / 文化財 / 赤外分光 / 機器分析 / フィルム |
研究実績の概要 |
最初に5mm四方の小さな試料について、従来の可視・近赤外分光写真法では検出できない塗抹文字の一部が、市販のFTIRイメージング装置では検出可能になることを実証した。このことは、中赤外分光イメージング法が法科学や文化財科学において有用であることを示唆している。 次に市販のFTIRイメージング装置では難しい、大きな試料を測定可能な中赤外分光イメージング装置の構築を試みた。しかし香川大学工学部石丸研究室において、すでに実験室レベルの試作機を構築していたので、効率的に研究を進めるため石丸研究室の協力を得て実験を行った。具体的には、ボロメータカメラと干渉計によって構成された広視野赤外分光イメージング装置を用いて、各種試料の中赤外分光イメージングが測定可能か否かを検証した。その結果、ボロメータは市販のFTIRに用いられているMCT検出器に比べて光の検出感度が弱いことから、紙の上のインクの中赤外分光イメージングは検出できなかった。しかし40ミクロン厚のポリスチレンフィルムの透過測定や、アルミ板上の比較的吸光度の小さいインクなどについては、中赤外分光イメージングが測定できた。投影レンズを用いて試料の小さな像を作成し、その像の分光イメージングを測定していたので、試料サイズに依らず一定時間(約1分)で測定でき、実際に10cm四方の試料でも問題なく測定できた。 以上のように、光の透過量あるいは反射量が比較的大きい、明るいサンプルであるならば、ボロメータを用いた中赤外分光イメージング装置でも、測定が可能であることが明らかとなった。また、投影レンズを用いることによって、試料のサイズが大きくなっても、まったく問題なく測定が可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際に、ボロメータカメラを検出器に用いた広視野中赤外分光イメージング装置を用いて、分光イメージングが測定可能であることが実証された。また、投影レンズを用いることで、試料サイズが大きくなっても、まったく問題なく測定できることも実証された。ボロメータは検出感度が小さいので測定できるのは比較的明るい試料に限るという結論も、想定の範囲内である。これまでの実験から、およそどの程度の明るさの試料ならば測定可能であるのかということも、明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策は大きく2つに分けられる。 1つ目は応用探索研究である。上記のように、比較的明るい試料ならば、ボロメータカメラを検出器に用いた場合でも広視野中赤外分光イメージングが測定できた。したがって文化財科学および法科学で取り扱う試料の中から比較的明るい試料に焦点を絞りつつ、広視野中赤外分光イメージング法が有効活用されるような応用例を、文化財科学や法科学の研究者と協力しながら、探索したい。 2つ目は、広視野中赤外分光イメージング装置の高感度化である。例えばボロメータカメラの代わりにMCTアレイセンサを用いることで大幅に感度を増加させることは可能であるが、検出器の価格が非常に高く、実際にそれを用いて実験をすることは難しい。しかし検出器以外の、光源や解析プログラムにおいても、装置の高感度のために改善できる余地があるので、それらを改善することで装置の高感度化を実現し、紙の上のインク等の試料を測定可能にしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、紙上の各種インクの中赤外分光写真撮影を行い、その結果を基に紙上のインクの分布を測定し、国際学会において発表する予定であった。しかし紙からの反射光量が少なく、紙上の各種インクの中赤外分光写真が正確に撮影できなかった。そこで計画を変更しアルミ板上の各種インクの中赤外分光写真撮影を行うこととしたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、紙上の各種インクの中赤外分光写真撮影と国際学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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