結像型干渉計とボロメータカメラを組み合わせて作成した広視野赤外分光イメージング装置を用いて、中赤外分光イメージングの測定実験を行った。本装置は投影レンズを備えており、またフーリエ分光法として、耐震動性の高い結像型干渉計を使用している。FTIRを進化させた従来の赤外分光イメージングシステムと比較して、大きな試料でも短時間で計測できる、コストが安い、そして将来的には可搬性の点で有利であるという、いくつかの利点を持っている。また、測定波長領域は8~14μmであった。 本装置の文化財科学や法科学における有用性を検証するために、ポリスチレンフィルムや、アルミ板上の各種インクなどをテスト測定した。40μmの厚さのポリスチレンフィルムを透過測定したとき、とても明確なスペクトルが得られた。また、10 cm × 10 cmのアルミ板上の各種筆記具インクを反射測定したときも、明確なスペクトルが得られた。本装置では240 × 320 = 76800点のスペクトルを、 5 cm-1の分解能で、約1分で測定できた。インターフェログラムを解析する時間を含めても、およそ2分で測定データが得られた。また、投影レンズの倍率を変えることによって、測定面積を自由に変えることもできた。測定時間は測定面積に依らず一定であった。本装置はとてもコンパクトで可搬性を持っているので、文化財試料や鑑識試料の現場観察が可能になると考えられる。
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