研究課題/領域番号 |
25750111
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研究機関 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
研究代表者 |
石浜 佐栄子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (60416047)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 博物館資料 / 地層剥ぎ取り / 実物標本 |
研究実績の概要 |
自然史博物館ではこれまで動植物や岩石鉱物など、主に「物質」を表現する資料の収集・保存・活用を行ってきた。これに対して地層は「物質」であるだけではなく「現象」をも表現しているため、地層の標本化を通して地球の「現象」を標本化することができると期待される。地層は単純に収集・保存することが難しいが、「地層剥ぎ取り」という技法を用いると、地層の表面を原状のまま剥がし取って実物標本化でき、学術研究をはじめ展示や普及活動等を通して広く社会に還元できる。地層剥ぎ取り技法を用いて地球の「現象」を実物標本化し、また博物館資料としての位置付けを明確化するための調査研究を行うことで、博物館資料の持つ新たな可能性を提示することを目的として、本研究を行っている。 3年目である平成27年度は、火山活動をあらわす火山灰層と地震活動をあらわす断層という2種類の地層の剥ぎ取り標本を収集し、地球の「現象」の新たな実物標本化を実践することができた。特に断層の標本では、断層で接する全く固さの異なる地層を一連の標本として収集するため、剥ぎ取りと型取りを組み合わせた新たな実物標本化の手法を試行した。 また、国立科学博物館のリニューアルされた常設展や、東京農工大学科学博物館で開催された巡回展「土ってなんだろう?」において、地層剥ぎ取り標本の製作方法や展示手法等について事例調査を行った。さらに、博物館等における地層剥ぎ取り標本の収集とその意義等について論文を発表して成果の発信を行うとともに、身近な材料を用いた簡便な剥ぎ取り手法について、普及的著作の執筆を通して広く一般に紹介することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年9月から平成28年4月まで、産前産後・育児休暇に入ったため、研究期間を1年間延期した。休暇前までの期間には、研究はおおむね順調に進展できた。 (1)『地球の「現象」の実物標本化の実践と、地層剥ぎ取り標本に関する知的情報の共有化』については、剥ぎ取りと型取りを組み合わせた新たな実物標本化の手法にチャレンジしたり、簡便な剥ぎ取り手法について普及的著作を通じて一般向けに紹介するなど、目的を十分に達成することができた。 (2)『展示や普及活動の実践を通じた、「現象」を表現する新たな博物館資料としての発信』については、産前産後・育児休暇で進めることができなかったため、平成28年度に実践を行う。 (3)『成果の公表と、博物館資料の新たな可能性の提示』については、博物館等における地層剥ぎ取り標本の収集とその意義について論文を発表するなど、研究を順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 地球の「現象」の実物標本化の実践と、地層剥ぎ取り標本に関する知的情報の共有化 平成27年度に引き続き、地球の「現象」の実物標本化を実践し、地球「現象」をあらわす地層の剥ぎ取り標本を収集する。また普及的著作の執筆や、博物館関係者や教育関係者等を対象とした地層剥ぎ取り講習会の開催などを通して、標本に対する理解を深めてもらう。 (2)展示や普及活動の実践を通じた、「現象」を表現する新たな博物館資料としての発信 地層によって可視化された地球表層の「現象」について広く一般に知ってもらうため、平成25~27年度に収集した標本を用いて展示や普及活動の実践(当館における企画展示や、貸し出しを行うための「地層剥ぎ取り」標本キットの整備等)を行う。標本の「見せ方」にも工夫を凝らして地層から読み取れる現象を伝え、「物質」だけでなく「現象」を表現する新たな博物館資料として広く一般に発信し、博物館資料の意義と魅力を十分に伝える。 (3)成果の公表と、博物館資料の新たな可能性の提示 これまで「物質」としてしか存在してこなかった博物館資料に「現象」という新たな視点や側面が加えられたこと、また地層剥ぎ取り標本が博物館資料として明確に位置付けられたことを取りまとめて学会発表等を行い、また論文やインターネット等を通じて公表する。博物館資料が持つ新たな可能性を示すことができたことを全国の博物館関係者、教員、教育関係者等に発信して周知し、博物館資料を核とした博物館活動の更なる活発化へとつなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
産前産後休暇および育児休暇(平成27年9月~平成28年4月)のため、研究期間を1年間延期し、そのため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
妊娠中、特に遠方の学会や他博物館への出張、展示の実施等ができなかったため、平成28年度に繰り越して研究を行う。
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