将来の北極域温暖化増幅に伴うユーラシアの積雪変化による東アジア気象場の影響を明らかにするため、平成27年度は地球システムモデル(MIROC-ESM)によって予測されたユーラシア大陸の積雪変化に伴う積雪―アルベドフィードバックのプロセスに関する解析を行った。昨年度の解析から、地球システムモデルで予測されたユーラシア北部の気温上昇は秋季・冬季に比べると春季に顕著であり、モデルの積雪バイアスが大きいことが要因の一つであることが分かった。一方で、地球システムモデルの内部では、植生の葉面積指数(LAI)が診断されており時間変化するので、この影響評価も必要である。そこで今年度はLAI変化の積雪―アルベドフィードバックへの効果に関する解析を行った。解析の結果、積雪―アルベドフィードバックの大きさのうち、6割は積雪減少によるアルベド変化の効果で説明されるが、残りの3-4割はLAI変化による効果の可能性があることが示された。 また、積雪減少に関係するアルベド変化の効果を調べるため、気候モデルを用いた感度実験を行った。実験では、秋季から春季の高緯度陸域において、積雪に関係する高いアルベドの変化がある場合とない場合の2つの条件で、大気中二酸化炭素濃度の増加による温暖化による高緯度域の温暖化の影響を評価した。感度実験の結果、秋季から冬季については積雪変化が相対的に小さいことから、高緯度の地表気温上昇への積雪減少に関係するアルベド変化の効果が小さい。一方で、春季にはその効果が大きくなり、アルベド変化により地表気温が北緯45度以北の陸域で平均した地表気温上昇を約0.5℃大きくすることがわかり、積雪アルベド変化が秋季・冬季より春季の陸域の温暖化にとって重要であることがわかった。
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