研究課題/領域番号 |
25750121
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
金 路 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00436734)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 状態監視保全 / 最適保全方策 / 非定常マルコフ過程 |
研究実績の概要 |
システムをトラブルなく稼働させ続けるには、状態を継続的に監視してトラブルが発生する前に適切な保全を実施する状態監視計画保全が必須となる。これまでの状態監視計画保全における最適な保全方策の研究の多くは、対象システムの劣化を含む状態の変化過程に定常性を仮定してきた。しかし現実には、対象システムの状態変化は様々な要因の影響を受ける可能性がある。本研究の目的はシステムの状態やシステムを取り巻く使用・環境条件などの要因の監視に基づいて、保全行動とその実施時期を最適に定め、状態監視保全の方策を確立したい。そのために本研究の目標を、劣化過程が様々な要因を受けて変化する非定常なシステムを対象とした第Ⅲ世帯の状態監視モデルを構築すること、そしてその下での最適保全方策の構造的な性質を検討すること、さらにその実用性を検証すること、とする。 平成25年と26年度はシステムの劣化が操業条件・内部環境・年齢に依存して変化する場合に着目して最適保全方策の性質を検討してきた。これまでは、システム全体の劣化を一つのマルコフ過程でモデル化した研究が進められてきた。しかし橋梁等、大規模かつ複雑なシステムには、複数のメカニズムに起因した複合的な故障が起こる事例も多い。平成27年は、これまでの成果を二つの劣化メカニズムが互いに独立に進行する場合に拡張した。保全は個別にも同時にも実施できるとの想定の下、その保全問題を研究することで、より現実の状況へと研究を近づけていった。技術の高度化や設計の複雑化が進むにつれて、情報・通信ネットワーク、送電力網、交通網などの社会インフラのみでなく、住環境等我々の社会を支えている様々なシステムが巨大化・複雑化に進んでいる。本成果を複数のメカニズムに起因した劣化システムへも拡張できれば、システム全体の信頼性と安全性の確保のための効率的な保全の実現に向けた進展が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
劣化過程が様々な要因を受けて変化する非定常なシステムを対象とした第Ⅲ世帯の状態監視による効率的な保全方策の提案のために、最適保全方策の理論的な検討と数値による検証は当初の計画通り、順調に進展している。具体的には、複数の劣化メカニズムを考慮する場合のモデルに基づく最適保全方策に関して、片方のメカニズムによる劣化のみに着目すれば保全行動同士の優劣が部分的に定まる、広義の単調性が成り立つための十分条件を示した。また、すべての保全行動がシステムの劣化状態に関して順序が定まるとした狭義の単調方策が実際によく用いられているが、その方策が最適と限らないことも数値的に示した。これらの成果を3種類以上の劣化メカニズムが影響する場合へ拡張しており、この研究を更に進めて、学術論文として投稿する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度までに、システムが操業条件・内部環境・年齢の影響を受けて劣化するシステムにおける最適保全方策の性質を究明した。平成27年度は複数の互いに独立なメカニズムによる劣化システムの最適保全問題を解決した。これらの成果により本研究の目標の一つである、様々な要因を受けて劣化過程が変化する非定常なシステムのための第Ⅲ世代の状態監視モデルの構築を実現できた。 平成28年度は本課題の最終年度にあたる。これまで提案した状態監視のモデルとその下で得られた最適方策の性質を数値解法に応用して、効率的な解法を実現することと、他の保全モデルへの近似性能を評価することの2つを目的として、モデル空間の拡大とその下での最適保全方策の選定のための数値解法を確立する。併せて、選定された保全方策の効率を定量的に評価する手法も提案したい。また本補助金のお陰で到達できた研究成果の公表にも努めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本科研費の最終年度に、成果公表を目的とした海外出張を複数計画しており、その経費に充てるために、平成27年度に出費せずに繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
国際会議への旅費と参加費およびプロシーディング原稿の英文推敲料に充てたい。
|