システムをトラブルなく稼働させ続けるためには、システムの状態を継続的に監視してトラブルの発生前に適切な保全を実施する状態監視保全が必須である。本研究の目的を、システムの状態や取り巻く使用・環境条件など状態変化の要因の監視に基づいて保全行動とその実施時期を最適に定める、状態監視保全の方策の確立への貢献と定めた。そして本研究の到達目標を、劣化過程が様々な要因を受けて変化する非定常なシステムのための状態監視モデルを構築すること、その下での最適保全方策の構造的な性質を検討すること、加えてその実用性を検証すること、の3つに設定した。 平成25年度と平成26年度は、システムが操業条件・内部環境・年齢の影響を受けて劣化するシステムにおける最適保全方策の性質を検討した。変圧器のデータを用いて、得られた成果の有効性を検証した。平成27年度は引き続き、対象システムの状態把握が完全ではない場合を含むように拡張し、観測確率行列を持つ非定常な部分観測マルコフ決定過程として最適保全方策の問題を定式化して、最適方策を2次元の単調方策に限定するための十分条件を示した。最終年度の平成28年度は、平成25年度からの研究で得られた性質をもとに、保全方策の最適解を提示するアルゴリズムを提案した。さらに、センサーによる常時状態監視が可能なシステムを前提として得た成果以外に、状態の観測に点検を要するシステムについて状態観測の計画である定期点検の最適化の問題なども検討した。定期点検と状態監視保全を併用する保全方策の問題という保全分野での新しい挑戦を見つけ、この四年間の研究成果を今後の新しい課題へと繋げることができた。 最後に、平成25年度からこれまでの研究成果を国際会議で発表して、議論で得られた意見を反映して論文としてまとめて投稿・掲載することにより、本科研費の援助の下で得られた成果を社会に発信できた。
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