本年度は研究最終年度として,昨年度までの実績を踏まえて以下の活動を実施した.まず,昨年度までの継続として避難所選定のための数理モデルおよび解法を構築した.避難生活において,その場所を確保するとともに家と避難所の移動距離が一定の距離以内にあることは,円滑な生活再建のためにも重要な要素となる.避難所を選定するための規準のひとつとして移動距離に対する公平性を考える必要がある.このため移動距離の公平性に関する理論的性質の検討および効率性と公平性を同時に考える実用的な問題を解決するための数理計画モデルおよび発見的解法を開発した.また,地域ごとの需要の発生量の違いを考慮したシミュレーションによる各避難所へ与える影響を分析した. 加えて,避難経路の選定および防災マップへの展開のために奈良市中心部を対象に,タブレット端末を用いて,写真とGPS座標による危険箇所の調査を複数名で行い,これらのデータと公開されている危険情報とを統合し,避難時の危険度考慮した避難経路の選定のためのシミュレーションを行った. また,本年度を含めた各年度で調査した結果や開発したモデルによる分析を,既存の道路網状を用いた防災マップへの展開を考慮し,現場の先生にも視覚的に確認,操作可能にするために,地理情報システム上で試作した. これまでの成果を踏まえて,小学生の保護者を対象にした防災対策に関する発生前から発生後までの時間軸を考慮したワークショップを行い,事後アンケートからわかりやすさという点で一定の効果が得られることを確認した.
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