研究課題/領域番号 |
25750131
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐野 夏樹 東京理科大学, 理工学部, 助教 (60568971)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マーケティング / 消費者行動 / 統計モデル / センサーネット / RFID / ビッグデータ |
研究概要 |
本研究の目的は,小売業における顧客の店舗内移動情報をRFID(Radio Frequency Identification)を用いて収集し,顧客の販売履歴データおよび,チラシに掲載された安売り商品情報などを用いて,顧客の売場における行動と購買結果の因果関係を明らかにする店舗内行動モデルを構築することであった. 平成25年度は,研究計画の1年目であり,顧客の商品購入履歴であるPOS(Point of Sales Data)データおよび顧客の店舗内位置をしめすRFIDデータから顧客行動モデルの構築を行った.構築モデルでは,データからは,直接には観測できない顧客の行動として,“立寄り”,“通過”の2つの行動を想定し,それらは,POSデータから集計される売場購買商品数とRFIDデータによって集計される売場滞在時間として間接的に観測されるものとする.また2つの行動は,1時点手前の行動に依存して推移するものとする.つまり,一定の確率で立寄り⇒通過,通過⇒立寄りの行動が推移し,その確率は,消費者毎に異なるとする. 一方で,Dharらは,消費者の購買行動に,慣性的な性質を発見し,ショッピングモーメンタム効果として,提唱している.これは,一つの買い物が財布のひもを緩めさせ,当初購入予定では無かったものまでも購入してしまうというような行動である.このような行動は,提案モデルにおいて,立寄り⇒通過の推移確率の低い顧客に相当する.本年度は,このようなショッピングモーメンタム効果によって購入したと思われる顧客の購買履歴の結果について検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は提案行動モデル用いて,①売場魅力度,売場プロモーション,安売り効果などの売場評価を行うこと②消費者行動仮説の検証を行うことの二つであった. 初年度の研究では,②の既存の消費者行動仮説の検証を行うことを中心に研究を進捗させたが,①の売場評価の方策としては,モデルの出力結果から売場評価のための指標を算出することを検討した.例えば,最終的な商品の購入にいたるプロセスにおいて,POP広告などのインストアプロモーションの役割は,顧客に商品の存在をアピールし,顧客に売場に立ち寄らせることである.したがって,売場のインストアプロモーション評価のためならば,全顧客の売場行動に対する立ち寄り割合を売場毎に算出することで指標化が可能となる.しかし,売場評価のためのモデルを構築しなおすことも検討している(今後の研究の推進方策参照).
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今後の研究の推進方策 |
1年目に提案した行動モデルでは,立寄り,通過の行動は,1時点手前の行動に従って確率的に決定されるものの,外的要因の影響は考慮していない.しかし,なんらかの外的要因も行動に影響を与えるものと考えた方が自然である.例えば,売場自体が持つ顧客吸引力が異なるため,売場によって,立寄りやすさが異なると考えられる. また,売場におけるバーゲン商品数の規模も売場行動に影響を与えるものと考えられる.売場におけるバーゲン商品数は,収集したチラシ掲載商品データベースからの集計が可能である.これらの要因をモデルに入れ込むことにより,要因の売場行動への影響の定量化が可能となる.このことは,売場毎に顧客が売場に立寄っている度合いを定量化できるため,売場評価の指標として有用である.また,バーゲン商品数の立寄りへの影響度合いを定量化することにより,立寄りに必要な最小限のバーゲン商品数を決定することが可能となる.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入予定だったデータストレージサーバや数値実験用PCを既存設備の利用によって対応したため,物品費に残額が生じた. 研究成果発表のための旅費として使用する予定であるが,新規に行う数値計算のための計算機負荷が大きいようならならば,新たに購入する予定である.
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