研究課題/領域番号 |
25750139
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 諏訪東京理科大学 |
研究代表者 |
今村 友彦 諏訪東京理科大学, システム工学部, 講師 (50450664)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 傾斜地 / 火炎 / 熱気流 / 熱流束 |
研究概要 |
本研究は、傾斜地において発生した火災を対象として、火炎形状,温度・速度性状といった火炎及び熱気流の基礎性状を、延焼を決定する主要因である熱流束の予測モデルへ展開することを目的としている。平成25年度は、このうち傾斜地における火炎形状と温度分布に着目した。10cm四方の正方形,10cm×60cmの矩形及び1cm×60cmの線形の開口部をもつLPGバーナーを使用して、斜面角度を0°, 10°, 20°, 30°, 40°の5段階設定し、火炎をVTR撮影することにより火炎形状を読み取った。また、線径0.32mmφのK型熱電対を90本使用し、火炎周囲の温度場を3次元的に計測した。傾斜地における火炎形状として火炎の高さ,斜面上への付着長さ,傾斜角度を取りあげ、発熱速度および斜面角度との関係を調べたところ、①斜面上への付着長さは、正方火源の場合は発熱速度にあまり依存せず斜面角度のみで決まったが、線形火源の場合は特に斜面角度20°以上の場合で発熱速度の影響が現れること、②斜面上への付着長さを代表長さの項に組み込んだ新たな無次元数を用いることにより、火炎高さと発熱速度の関係を火源形状や発熱規模に依存せず1つの関係で整理できること、を示した。さらに、斜面に沿った方向及び斜面に対し垂直な方向の温度分布に注目し、①火源中心軸に沿った温度は、斜面角度が大きくなると、水平面での火災プルーム(火炎及びその上方に形成される熱気流)で提唱されている連続,間欠,プルーム領域といった区分けが適用できなくなること、②温度分布の広がりが単純な分布曲線で表現できること、③温度分布幅は、斜面角度が大きくなるにつれ、斜面方向へは広がり、高さ方向へは狭まる傾向があること、を示した。これらの成果を、査読付き国際プロシーディングに1報,国内学会で2報(1報は5月発表予定)発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
傾斜地における火災プルームからの熱流束の予測モデルを構築するには、火災プルームの基本性状である火炎形状,火災プルーム主軸に沿った温度減衰性状,温度分布性状などの把握が不可欠である。平成25年度は、当初計画通り、平成24年度までに取得した温度データを整理して、火炎及び熱気流の垂直方向/斜面方向の温度分布を求め、発熱速度と傾斜角度,火災プルーム中心軸からの距離を変数とした温度分布曲線を求めることができた。特に、傾斜面上における火災プルーム中心軸に沿った温度は、その減衰開始点が、傾斜角度が大きくなるにつれて下流側へ遠ざかり、間欠火炎領域とプルーム領域の区別がほとんどなくなること、温度分布の広がりを表す指標βが傾斜角度に単調に依存することを明らかにし、これにより、温度分布を予測可能とする端緒をつけたことは大きな成果である。また、速度計測については、差圧計測による流速計測方法の検討を進めるとともに、数値シミュレーションによって火災プルーム周囲の速度場(特に火炎付近の空気巻き込み挙動)を予測する方法について検討を始めたところである。また、対流熱流束と放射熱流束の分離測定に関しては、精度よく計測できる熱流束センサーおよび放射センサーの調査やこれらを用いた測定方法の調査検討を進めるとともに、速度測定と同様に数値シミュレーションによる評価手法の可能性を検討した。平成25年度は、査読付き国際プロシーディングに1報,国内会議に2報発表した(1報は2014年5月発表予定)。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)火災プルーム性状に及ぼすスケール効果の検討:平成25年度に明らかにした、火災プルーム形状,温度性状は、100mm四方のバーナーを用いた実験結果によっている。結果に及ぼす火源寸法の影響を検討するため、直径50 mmの円形バーナーを用いた小型実験により温度測定をおこない、火災プルーム周囲の詳細な温度データを取得する。 (2)速度測定:微差圧計及びピトー管を用いて、火災プルーム周囲の速度場を計測する。同時に数値シミュレーションを実施し、両者を比較することによって火災プルーム周囲の速度場の予測手法を確立させる。 (3)熱流束の測定:火災プルーム下流側床面に、下流方向に複数の熱流束センサーと放射センサーの組を配置し、全熱流束と放射熱流束を測定する。測定値からそれぞれの熱流束に及ぼす下流側距離,発熱速度および斜面角度等の影響を検討する。 (4)熱流束予測モデルの構築:火炎を直方体の積み重ねと見立てて、受熱面(放射センサー設置位置)と火炎との位置関係を示す形態係数を、平成25年度に取得した火炎形状のデータも用いて求める。また、平成25年度に取得した温度分布から火炎表面温度を求め、これと形態係数とから熱流束を計算し、放射センサーによる実測値と比較することで、放射熱流束の予測方法を確立する。熱流束センサーと放射センサーの出力値の差分が対流熱流束の実測値に相当すると考えられるので、温度分布及び速度計測結果を用いて対流熱流束を計算し、実測値と比較することで熱流束予測モデルの確立を目指す。床面材質や、火源が経時的に変化する場合も検討対象とする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に必要となる物品を購入した結果、16,178円が残額として残った。これを平成26年度に必要となる物品の購入費用として繰り越すことで、無駄なく効率的に研究を進めることができると判断した。 今年度の研究費は以下の用途に使用する予定である。①圧力差を測定して速度値を求めるため、そのための微差圧計測装置の購入費。②全熱流束及び放射熱流束を計測するための熱流束センサー及び放射センサー購入費。③温度計測用の熱電対購入費。④燃料及び火源材の購入費。⑤成果発表のための学会参加費及び旅費(国内)。
|