研究課題/領域番号 |
25750142
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 雄治郎 東京大学, 地震研究所, 助教 (30392939)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 火山災害 / 火山噴煙 / 数値シミュレーション / 大型計算機 |
研究実績の概要 |
爆発的火山噴火における火山噴煙挙動の再現を目的に,3次元数値シミュレーション研究を推進した.気象シミュレーションモデルに基づいた気象場データを3次元火山噴煙モデルの初期条件として入力出来るよう,昨年度までに数値モデルを開発した.今年度は,気象場データ3次元モデルに読み込み,中規模噴火と大規模噴火に関する実際の噴火事例の再現シミュレーションを行った. 中規模噴火事例として,観測データが豊富な2014年インドネシア・ケルート火山噴火のシミュレーションを行った.気象モデルで得られる噴火時2014年2月13日における大気密度・圧力・温度・風向・風速を,噴火シミュレーションの初期条件として与えた.地質調査で得られた噴出物の総量と人工衛星画像や地震波データで得られた噴火継続時間から,噴火シミュレーションで最も重要なパラメータである噴出率を見積もり,火口での境界条件とした.大型計算機を用いた計算の結果,噴煙の最高高度・水平に拡大する噴煙の高度・拡大方向・拡大率が人工衛星画像などの観測データを再現することができた.特に,野外調査から得られた噴出率のうち最小値を仮定すると,これらの観測データを整合的に説明できることを明らかにした. 大規模噴火事例として,1991年フィリピン・ピナツボ火山噴火事例に関し,気象モデルによって再現された噴火当時の気象場を初期条件とし,3次元シミュレーションを行った.野外観察から見積もられた噴出率を境界条件として計算したところ,噴煙の最高高度・水平に拡大する噴煙の高度・拡大方向・拡大率・降灰分布が人工衛星画像や野外調査などの観測データと一致した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではより現実的な火山噴煙モデルの作成を目的としており,実際に近い気象モデル計算結果を初期条件としたシミュレーションが,中規模噴火と大規模噴火に関して観測データを正しく再現できることを確認できた.小規模噴火(霧島山新燃岳2011年噴火)に関しても,開発したモデルが観測データを正しく再現できていることを昨年度までに確認しているため,幅広い噴火条件・気象条件のシミュレーションが可能であることが分かった.以上より,火山噴火の3次元降灰モデル開発を目的とした本研究は,現在までに当初の予定を達成していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究が目指す災害予測システムの提案には,様々な噴火条件・大気条件に対する火山灰の輸送と堆積のシミュレーション結果が必要となる.これまでに引き続き,複数の大型計算機を使用することでデータの蓄積を行う.また,降灰予測の一般化モデルを構築するために,有限な計算機資源の利用を計画的に行い,小・中・大規模噴火それぞれに対し代表的な大気条件を与えた計算に絞って実行する.また,数値モデルで計算する火山灰の粒子数は現実に比べ少数であるため,統計的に扱える粒子数を見極めることによって地質調査データと比較可能な形にし,研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計算処理用ワークステーションの購入費、American Geophysical Union Fall Meetingへの参加旅費など、おおよそ計画通りに使用できた。航空券代金やワークステーション費に関し、使用計画時の見積もり金額と多少変更があったため、4,915円の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該助成金と翌年度請求助成金から、6月末-7月初に開催されるIUGG2015大会への参加費、大規模シミュレーション結果の保存用HDD購入費、論文投稿費に充てる予定である。IUGG2015大会はプラハで開催され、その航空運賃・1週間の滞在費・学会参加費・投稿費を支出する。本研究に関しJournal of Volcanology and Geothermal Researchに投稿する原稿を作成中であり、投稿費用が必要となる。また、3次元シミュレーション結果の容量はこれまでにも数10テラバイトに達しているため、その保存用にNetwork Attached Storage (NAS)を購入予定である。
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