研究課題/領域番号 |
25750144
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山崎 雅人 名古屋大学, 減災連携研究センター, 寄附研究部門助教 (60628981)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 災害 / 経済被害 / 応用一般均衡モデル |
研究概要 |
東日本大震災では、素材・部品工場の被災により、多くの製造業で利用されていた素材、部品の供給が停止した。このサプライチェーン寸断による生産の減少ないし停止は、被災地のみならず全国の製造業に波及し、日本全国に経済被害を波及させた。本研究は、巨大災害の経済被害評価への、サプライチェーンを明示的に考慮した「産業連関表」に基づく「応用一般均衡モデル」の適用可能性を検討するものである。 平成25年度は、経済産業省が2010年に公表した、9地域からなる日本の「地域間産業連関表」に基づき、8地域23部門からなる応用一般均衡モデルを構築した。同モデルは、パティ・クレイモデルを組み込んだ逐次均衡動学モデルであり、巨大災害の経済被害を空間的にも時間的にも評価可能である。開発したモデルにより、東北地方と関東地方に地震に伴う被害を入力し、サプライチェーンを通じて中部地方等の他の地域の製造業にいかなる影響をもたらすかをシミュレーション分析を行った。シミュレーション分析により、災害の経済被害は、製品の地域間での代替性可能性(地域間交易における代替の弾力性)に大きく依存することが明らかとなった。また、経済産業省公表の各地域の「鉱工業生産指数」(実データ)とシミュレーション結果を重ね合わせ、各種製造品の地域間での代替可能性に関するパラメータ等の値を推定するとともに、同モデルが東日本大震災の経済被害を一定程度再現可能であることが確認できた。結果は、The 21st input-output conferenceおよびThe 4th Conference of the International Society for Integrated Disaster Risk Management (IDRiM) Conferenceといった国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、経済産業省が2010年に公表した「地域間産業連関表」に基づく応用一般均衡モデルを開発し、東日本大震災における経済被害の再現研究を実施した。シミュレーション結果より、製品の地域間での代替性可能性を示すパラメータにシミュレーション結果は大きく依存することが明らかとなった。さらに経済産業省の公表している「鉱工業生産指数」(実データ)と対応させることで、上記の応用一般均衡モデルが東日本大震災の経済被害を再現する上で一定の有効性があることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標は、地震動や津波浸水、液状化等の地震ハザードの情報をインプットすることにより、地震ハザードに直接的に暴露され被災したことによる経済被害だけでなく、サプライチェーン寸断に伴う経済被害までを評価できる包括的なモデルの開発とその適用にある。サプライチェーン寸断に伴う経済被害の波及を表現するモデルの開発は平成25年度における研究において一定の成果を得た。今後は地震ハザードと巨大地震発生直後の各産業の生産能力を関連付けるフラジリティ・カーブを、過去のデータ等を用いて統計的に推定することに注力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
地震ハザードに直接・間接に由来する生産被害の推計モデル開発に向け、データ購入、数値解析ソフト購入のため。また研究成果を国内外の学会等において発表するための旅費のため。 引き続き、地震ハザードに直接・間接に由来する生産被害の推計モデル開発に向け、データ購入、数値解析ソフトの更新に充てる。また研究成果を国内外の学会等において発表するための旅費および英文校正費に充てる。
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