研究課題
東北地方太平洋沖地震により広範囲に発生した地盤変動と海岸侵食に着目し、既存の地盤沈下量と海岸侵食量の関係式(三村ほか(1993)による汀線後退量を求める式)の有効性を検証した。その結果、海岸の立地、砂浜の状況、海底の状況といった条件が適切な砂浜海岸に限れば、ばらつきは見られるものの既存の汀線後退量の予測式は実測値と整合関係にあることが判明した。過去の記録をもとに南海トラフ巨大地震による地盤変動量を調査したところ、地盤沈下が顕著な場所および最大沈下量は、高知県高知海岸の2 mおよび和歌山県七里御浜の40 cmと判明し、両海岸を本研究における調査対象地とした。汀線後退量予測式に必要な各種海岸地形パラメータを求め、上記式をもとに後退量を計算したところ、高知海岸における最小値は81 m、最大値は135 mであり、七里御浜における最小値は2 m、最大値は21 mであった。両調査地において想定された海岸侵食範囲内の土地利用状況を調べたところ、高知海岸については、建物用地(全体の21%)や農用地(11%)といった居住・経済活動範囲が多く含まれ、すなわち直接的な被害規模が大きく、一方、七里御浜については、海浜(全体の37%)の比率が大きく、直接的な被害の程度は相対的に小さいと考えられた。今後の対策としては、擁壁による海岸侵食防止や養浜による砂浜拡大といったハードな対応もありうるが、海岸侵食や浸水も想定した土地利用制限など、長期的なソフトな対策も必要と考えられる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件)
地形
巻: TBD ページ: TBD
海洋開発論文集
日本緑化工学会誌
巻: 41 ページ: 163-168