東日本大震災の被災者に復興曲線インタビューを実施した。復興曲線インタビューとは、被災者に災害から現在までの心の変化を曲線で描いてもらいながら復興過程の意味づけを行うインタビュー手法である。インタビューの結果、被災者の生活再建に直接つながるような(例えば住宅再建)支援は、時に被災者の現在の生の否定につながり、かえって被災者を無力にしてしまうことがあること、そのときは、被災者の現在の生を肯定するような外部者のかかわりが、被災者の力づけに結びつき、結果的に生活再建等のよりよい支援を可能とすることがわかった。以上のプロセスを、「めざす」かかわりと「すごす」かかわりの2つのキーワードから分析を行った。これは、肥後功一氏が保育の臨床コミュニケーションの現場から提唱した概念である。「めざす」かかわりは、現状をよりよいものにしようとするかかわりであり、「すごす」かかわりは、「変わらなくてよい」という現在の生のかけがえのなさを肯定するかかわりである。対象が、何らかの原因で無力感を抱えているとき、「めざす」かかわりは、その無力感を強めるように働き、かえって現状を閉塞したものにしてしまう。そのときは、変わらなくてよいという「すごす」かかわりが、対象の力づけに資し、豊かに「めざす」ことができるようになるというものである。この2つのかかわりは、災害復興における支援にも同様に当てはまると考えられる。最後に、東日本大震災の被災地は、ようやく住宅再建を終えたところであり、個別再建に一段落がついた今、新しい環境でどのように生活を再構築していくかが問われている。長期的な視野での地域復興が今後の課題であると考えられる。。
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