平成26年度における主な研究実施内容は、バングラデシュにおいて竜巻等のシビアローカルストームが頻発するプレモンスーン期の4月及び5月に高時間分解能自動気象観測装置による集中観測を実施したことである。前年度の3月に、シビアローカルストームの常襲地域における4地点に気象測器を設置して観測を開始した。太陽光パネルの電力供給不足による観測の一時的な停止により4月については連続的な観測はできなかったが、パネルの交換により5月には安定的に連続観測を実施することができた。今回の集中観測において、5月の1か月間に9例のシビアローカルストーム事例の時間的高分解観測に成功した。シビアローカルストームの通過に伴う風向・風速・気温・気圧・湿度の地上における変動を、1分間隔という極めて時間的に高分解能な精度で捉えることができた。具体的には、シビアローカルストームの通過に伴う風速の上昇、強い下降流である冷気外出流による気圧の上昇(メソハイ)、気温の急激な低下を捉えることができた。これらのシビアローカルストームに伴う時間的に詳細な地上気象変動が捉えられたのはこれまでに殆ど例が無く、極めて貴重な観測データである。現在、これらの気象データを活用してシビアローカルストームの詳細な構造を明らかにすべく解析を進めている。また、バングラデシュ気象局より入手した高層気象観測データも併せて解析に利用することで、地上から上空までのシビアローカルストームの構造、シビアローカルストームが発生した大規模な環境場についても明らかにすることで、これまでに殆ど行われてこなかった時間的に高分解能な観測データに基づく事例解析によるシビアローカルストームの総合的実態把握を進めていく予定である。
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