研究課題/領域番号 |
25750157
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 重徳 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (70511244)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胎盤バリア / 流体シェア / シェアストレス / 微絨毛 / グルコーストランスポーター / マイクロ流路 |
研究概要 |
母体と胎児の循環系を隔てる血液-胎盤関門(胎盤バリア)は、胎児の生育に必要な栄養因子の供給や代謝産物の排出を担う透過障壁として重要な役割を果たしている。この胎盤バリアは、母体血流による流体せん断力に晒されているにもかかわらず、胎盤における物質透過性は、現在主にトランズウェルなどを用いた静置培養系により評価されている。本研究では、マイクロ流路内に胎盤バリア様構造を再構築し、流体シェアがこれらの構造や機能にどのような影響を与えるかを解析することを目的とする。初年度は主に流体デバイスの作製とその評価について取り組んだ。母体および胎児循環系を模した2つのマイクロ流路間に厚さ10umのガラス化コラーゲン薄膜を配置し、ヒト胎盤由来栄養膜細胞株BeWo細胞を単層培養することにより、物質透過アッセイが可能な胎盤オンチップデバイスを作成した。流体シェア存在下で培養した細胞コンストラクトの胎盤バリアとしての構造・機能評価を行うため、走査型電子顕微鏡観察、villinやグルコーストランスポーターGLUT1等の免疫染色およびグルコース取込みアッセイを行った。その結果、潅流培養環境下においては生体内と同様に著しい微絨毛の形成、GLUT1の微絨毛側への局在化が観察され、それにともなってグルコースの胎児チャネル側への輸送が増大していた。これらの現象は、静置培養系では全く認められないことから、胎盤バリア構造および機能は母体血流によるせん断力により制御されている可能性が示唆された。また、従来の評価系で用いられていたポリエステル細孔膜を足場材料として用いた場合、GLUT1の局在化は認められず、流体シェアによるグルコース輸送量増加も観察されなかった。これらの結果から、本システムは、妊婦における薬物の胎盤通過性を流体シェアの観点から評価可能な新たなプラットホームとして有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度予定していたデバイスの作製・評価については予定通り終了した。また、次年度に予定していた機能評価実験についても、一部すでに結果を得ている。なかでも、流体シェアによる微絨毛の誘導についてはこれまでに報告例がなく、非常に興味深い現象である。これまでの研究成果は、2014年3月に京都で開催された日本再生医療学会にて口頭発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
流体シェアに反応してBeWo細胞が微絨毛を誘導するという初年度の知見は、胎盤輸送機構を理解するうえで新たな視点を与えることが予想される。胎盤バリア細胞は微絨毛に様々なトランスポーターを局在化させることにより物質の取り込みや輸送を行っているため、微絨毛誘導または微絨毛へのトランスポーターの局在化の分子機構の解明は、胎盤バリア制御機構の理解に大きく貢献できると思われる。したがって、胎盤バリアデバイスを用いて様々な刺激に対するバリア細胞の応答解析を中心に行う当初の計画を一部変更し、流体シェアによる微絨毛誘導の分子メカニズムに焦点を絞って、今後の研究を展開していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(最終年度)に予定していた低酸素状況下での培養実験に備え、CO2/O2インキュベーターを備品費として計上し支払い請求を行ったが、当初の計画を変更し、流体シェアによる微絨毛形成機構の解析を中心に計画を進めることにした。そのため、予定していた備品の購入を見送ることになり次年度使用額が生じた。 これまで灌流培養をするために必要なポンプなどは代表者が所属する研究室に既に配備されているものが使用可能であった。しかしながら、次年度からの所属機関変更にともない、ポンプ類の購入が必要となったため、当該助成金はそれらの購入に当てる予定である。
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