研究課題
若手研究(B)
アルツハイマー病では認知機能障害が顕在化するずっと前から、特徴的な病理学的所見である老人斑と神経原線維変化が出現していることが明らかになってきた。そこで、アルツハイマー病を超早期(無症状である発症前も含めて)に診断する有効な手段として、非侵襲的画像化技術を用いた脳病変の評価法に大きな期待が寄せられている。本研究では次世代機能性核磁気共鳴画像法(MRI)とされるフッ素(19F)MRIを利用したアルツハイマー病の超早期診断の実用化のための基盤を整備する。1. 老人斑を高感度に検出するための良質なフッ素(19F)MRIプローブの特性を解明した。プローブは基本骨格となるベンゾオキサゾール基を老人斑結合部位とし、ポリエチレングリコール(PEG)鎖からなるリンカーを挟んでフッ素原子を含んだ置換基を持つ。最適なPEG鎖長および置換基の組み合わせを検討するために、アルツハイマー病遺伝子改変モデルマウス(APPswe/PS1dE9マウス)を用いた画像化試験を実施した。異なる組み合わせのプローブによるMR画像を比較したところ、PEG鎖長がエチレングリコール7個分でフッ素原子を含んだ置換基としてtrifluoroethoxy基を持つプローブを用いた場合に最も強い信号が検出された。このプローブを用いると投与量を従来の半分の100 mg/kgまで減量することが可能であった。2. フッ素(19F)MRIによる神経原線維変化の画像化試験。神経原線維変化の蓄積が認められるモデルマウスとしてP301L変異型ヒトタウ遺伝子改変マウス(JNPL3マウス)を購入して飼育を開始した。今後、1で解明した最適なPEG鎖長および置換基の組み合わせを持つプローブを神経原線維変化画像化用に改良して、画像化試験を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
老人斑を高感度に検出するための良質なフッ素(19F)MRIプローブの特性を解明して、特許申請に加え論文発表に至ったため。
神経原線維変化画像化用のプローブを開発する。老人斑画像化用プローブにおける最適なPEG鎖長および置換基の組み合わせを神経原線維変化画像化用に改良した後、神経原線維変化を呈するJNPL3マウスを用いてフッ素(19F)MRIによる画像化試験を実施する。
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Journal of Alzheimer's Disease
巻: 39 ページ: 617-631
10.3233/JAD-131025