研究実績の概要 |
本研究の目的は、フッ素MRIを用いた老人斑と神経原線維変化の画像化法を開発することである。平成25年度までに、フッ素MRIを高感度に検出するための構造を見出し、それを利用した老人斑の画像化用プローブを開発した。そこで本年度は、神経原線維変化用に改良した化合物(Shiga-T化合物)を合成して、その有用性について検討した。 アルツハイマー病患者脳切片を用いて、Shiga-T化合物の神経原線維変化への結合性を蛍光顕微鏡解析により評価した。Shiga-T3, T5, T7をアルツハイマー病患者脳切片に処置すると神経原線維変化において強い蛍光が認められた。一方、老人斑では弱い蛍光しか認められなかった。Shiga-T4, T6, T8をアルツハイマー病患者脳切片に処置すると、神経原線維変化では弱い蛍光しか観察されなかったが、老人斑では強い蛍光が認められた。Shiga-T3, T5, T7は神経原線維変化に対して比較的選択的な親和性を示し、Shiga-T4, T6, T8は神経原線維変化よりも老人斑に強い親和性を示すことが示唆された。 合成したShiga-T化合物をマウスに投与して毒性を評価した。Shiga-T4, T6, T8をマウスに投与したところ、すべてのマウスが死亡した。Shiga-T5およびT7は20%クレモフォールにも溶解せず、投与液の調製が困難であった。 JNPL3マウス(加齢に伴って主に脳幹にリン酸化タウの高度な蓄積が認められる)にShiga-T3を投与してMR画像化試験を実施した。得られた画像を解析したが、脳幹には信号が認められなかった。MR測定後に脳切片を作成して蛍光顕微鏡解析を実施したところ、化合物の蛍光は観察できなかった。ヒトアルツハイマー病と遺伝子改変マウスでは神経原線維変化の性質は厳密には同一ではない。Shiga-T3はヒトの神経原線維変化に対して比較的選択的な親和性を示した一方で、今回用いたマウスモデルでの神経原線維変化への親和性は低いことが推察された。
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