研究課題/領域番号 |
25750163
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岡村 純也 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (30447594)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 初期視覚野 / 周辺視野 / 多点記録電極 / 活動電位 / 相互相関解析 / 内因性光学的イメージング / 局所電場電位 / 電流源密度解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、視覚的認識において対象の周辺から影響を受ける脳内メカニズムを、大脳皮質視覚野における情報の流れに注目して明らかにすることを目的とする。ネコの初期視覚野を対象とし、視覚刺激の中心と周辺に異なる方位の縞目を呈示したときの皮質の活動を計測した。内因性光学的イメージング法で皮質の広範囲の活動を計測し、周辺視野において、視覚刺激の中心に対応する皮質領域が刺激の周辺からの影響を受けることを確認した。本年度はさらに、5×5の多点記録電極を視覚皮質に挿入し、周辺視野に対応する皮質領域において神経細胞の活動の相互相関を調べ、活動電位の発生時間の差から視覚信号の流れを解析した。視覚刺激の中心と周辺に異なる縞目を呈示し、436の細胞ペアの相互相関を解析した。30のペアが有意な相互相関の値を示した。そのうち8ペアにおいて、活動の相互相関値の最大値が時間的遅延を持って発生し、視覚刺激の周辺に受容野を持つ細胞の方が、中心に受容野を持つ細胞よりも早く発火していた。この結果は、視覚刺激の中心と周辺に異なる縞目を呈示した際に、視覚刺激の周辺に対応する皮質領域から中心に対応する皮質領域に向かう信号の流れが生じたことを示唆する。これらのペアは、視覚刺激の中心と周辺に同じ刺激を呈示したときは有意な相互相関の値を示さなかった。活動電位を記録すると同時に局所電場電位を記録し、電流源密度解析から、視覚刺激の周辺に対応する皮質領域から中心に対応する皮質領域に向かう信号の流れの解析を行っている。電流源密度解析においては、視覚刺激の中心と周辺に同じ刺激を呈示した場合と、異なる刺激を呈示した場合とで明らかな違いは未だ見つかっていない。今後は、単一神経細胞の活動を用いた相互相関解析を進め、同時に局所電場電位を用いた解析法についても更に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内因性光学的イメージング法により、視覚刺激の中心に対応する皮質領域が刺激の周辺の影響を受けることを確認した。それに続き、多点記録電極を皮質に刺入して細胞活動の相互相関を調べ、対象の周辺から影響を受けるときの視覚情報の流れを細胞レベルで調べた。局所電場電位を用いた電流源密度解析では、対象の周辺から影響を受けるときの特徴的な情報の流れを未だ見出していない。しかし、多点記録電極で記録した神経細胞の活動電位の相互相関を調べることで、対象の周辺から影響を受ける際の初期視覚野における信号の流れを解析し、236ペアのうち8ペアが、視覚刺激の周辺に対応する皮質領域から中心に対応する皮質領域に向かう信号の流れを示した。この結果は、対象の周辺からの影響を受け、補完が生じる神経機構の基礎となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
視覚刺激の中心と周辺に異なる方位の縞目を呈示し、それぞれの領域に受容野を持つ神経細胞の活動の相互相関を調べた実験から、視覚刺激の周辺に対応する皮質領域から中心に対応する皮質領域に向かう信号の流れを示すことができた。今後は個体数、及び記録サイトの数を増やして解析を行う。多点記録電極では活動電位と同時に局所電場電位も記録しており、複数の電極で同時記録した局所電場電位の同期性解析、及び電流源密度解析により、局所電場電位のレベルにおいても補完知覚の基礎となる信号を検出できないか検討する。
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