本研究は、我々がこれまでに開発を行ってきた低侵襲心嚢内視鏡手術手技によって得られた肉眼的情報をマッピング情報として付加することで、X線被爆を軽減した安全で効率的でかつ、新しいイメージングモダリティーを積極的に用いた心嚢内視鏡肉眼的ガイド下カテーテルアブレーションを可能にすることを目的としたものである。 当該年度は、内視鏡画像データを3次元に構築する技術を確立した。まず、心臓モデルを360度周囲から内視鏡で撮像し、それらをCADデータに構築し、3Dプリンターで印刷することに成功した。また実際の診療では患者個人の心臓CT画像を用いてカテーテルアブレーションを行うため、CT画像を同様に3Dプリンティングする技術に応用した。これらを我々の内視鏡手術技術に搭載すべく、内視鏡サイズ、侵襲度、解像度など様々な条件で最も適した仕様を検討した。麻酔したイヌを用いて、心臓の内視鏡画像を撮像における安全性評価として、急性期は主に血行動態への影響をモニターし、慢性期は心膜の癒着の程度、心機能への影響を心臓超音波検査、病理学的検査により評価したが、特記すべき合併症を認めなかった。また、可視化した心臓画像の誤差について、剖検結果と比較して解析を行う予定であったが、3次元化した情報のスケーリングは容易であるため、既知のサイズの物をあらかじめ測定しておくことで正規化し、撮像データの誤差は最小限にできることを確認した。動物モデルと心臓モデルでの相違点として、画像解析時に必要な構造識別のための解剖学的特徴が少ない事、狭い心嚢腔で全周性に心臓を撮像することが困難な事があり、今後の課題として検討することとした。これらの課題を解決し、現行の3次元マッピングシステムへの統合へ向けて今後も開発を継続する予定とした。
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