研究課題
本研究の目的は,核医学イメージングを用いた心筋血流量測定における、入力関数の推定精度を低侵襲的な条件下で向上させることである。本研究では、まず、各検査において頻回採血によって得られた入力関数を対象に検討を行った。放射性薬剤塩化タリウム投与後の時間に対して、入力関数の個人間での差異を評価した。これにより、差異の大きい時間帯、つまり入力関数の推定精度において着目すべきデータの時間範囲を決定した。加えて、差異の小さい時間帯における入力関数の情報を利用して、標準入力関数を用いた心筋血流量測定法を構築した。個別入力関数に対して、標準入力関数を用いた場合の心筋血流量測定誤差は、0.69 ± 7.80 %であり、バイアスは認められなかったが、誤差は-12.80から14.25 %にまで分布しており、入力関数の推定精度向上の必要性が示唆された。単一光子断層撮影による心筋検査では、投与する製剤の性質上、心筋へ集積した放射能濃度に対する、左室内腔血中放射能濃度が極端に低い(10分の1から100分の1)。そこで、下行大動脈血中放射能濃度をもとにした入力関数の推定を検討した。塩化タリウムと同様に、代謝産物の影響を受けない放射性同位元素15Oにより標識した水投与および一酸化炭素吸入画像を対象とした。これらの画像を採用した理由は、左室内腔からの入力関数推定方法が確立されていること、および一酸化炭素吸入画像からの下行大動脈領域の特定が容易であること、である。画像から得られる下行大動脈血中放射能濃度は、入力関数と周辺組織(肺野)信号との混合信号であると仮定して、入力関数を推定した。左室内腔から求めた入力関数に対して、下行大動脈領域から求めた入力関数は、時間積分比において-9.0 ± 8.1 %の過小推定であった。今後、混合信号からの分離方法の高精度化や誤差要因としての信号の鈍りの可能性を検討する。
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心臓核医学
巻: 18 ページ: 18-20
10.14951/JSNC.18.01.18