研究課題/領域番号 |
25750171
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山田 真澄 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30546784)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / ハイドロゲル / マイクロ流体デバイス / 組織工学 / 肝細胞 |
研究概要 |
初年度に当たる平成25年度は,主に(1)ハイドロゲル流路構造・ウェル構造の新規ファブリケーションプロセスの開発,および(2)複合型細胞集塊の作製とその評価を行った。(1)に関しては,ハイドロゲルを形成するポリマーとしてアルギン酸,ゼラチン,アガロース等の天然素材を主として用い,微細加工によって得られた鋳型を利用したモールディング手法によって微細構造(流路・チャンバー)を有するゲル基板を作製した。そして,ゲル基板同士を化学的あるいは静電的に結合する新規手法として,ポリLリジンを用いた静電的接着手法(アルギン酸ゲル)や,酵素架橋を利用する化学的接着手法(ゼラチンゲル)を開発し,多層のマイクロ流路構造を作製する新規手法を実証した。これらのゲル素材によって形成された流路構造に対し,細胞接着性を付与するための表面処理を施すことによって,血管内皮細胞などの3次元的培養を行った。 また,(2)細胞集塊の形成法としては,ゲルファイバー内に細胞(肝細胞)を高密度で包埋し複合型組織体を形成する手法,非平衡状態にある水性2相水溶液系を利用したゲル内部への包埋手法,犠牲層を用いることで管腔構造を有するスフェロイドを形成する手法などの新規手法の構築を行った。肝細胞に関しては,非実質細胞との共培養を行い複合的組織を形成した上で,潅流培養用チャンバーに複合型組織体をパッキングし培養を行うシステムを開発した。また,定量的PCRによって肝細胞特異的遺伝子(アルブミン等)の発現を定量評価し,流速等の培養条件の最適化を目指した。また血管構造については,ハイドロゲル流路内部に血管内皮細胞・平滑筋細胞を高密度で包埋した多層状組織を構築し,潅流培養を行うことで,エラスチン等の血管特異的タンパク質の発現を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合型肝細胞培養系や血管組織の作製については、個別の複合組織構造の作製のみならず、潅流培養による機能発現とその定量評価を行うことができたため、予定以上の進捗があったと考えられる。一方で複合的筋組織の構築については、機械的能力の発現までに至っておらず、その点に関しては進捗が遅れている部分もあると言える。以上を総括すると、概ね予定通り研究が進捗したものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,初年度に開発した微細加工ハイドロゲル材料を利用して,細胞および細胞集塊の潅流培養を行うことで,より機能的かつサイズの大きな組織体の形成を目指す。特に肝細胞に関しては,これまでの遺伝子発現解析を,薬剤代謝遺伝子等に対してより詳細に行い,さらに培養環境(酸素濃度など)のモニタリングを行うことで,培養条件の最適化を進める予定である。また血管組織については,これまでの多層血管状組織について,生体内と同程度の印加圧力およびシアーストレス条件下において複数種の細胞を培養することで,より生体組織に類似した機能的組織体の構築を目指す。これらの応用展開を実証することで,微細加工ゲル構造体と潅流培養を組み合わせたアプローチによる,比較的大きな機能的組織体を作製するための新規基盤プロセスの確立を目指す。なお,細胞集塊の形成法として,初年度に開発した水性2相系を用いた手法の発展として,微小ウェル構造の表面特性(親疎水性)やアスペクト比の最適化を行うとともに,高密度に細胞を包埋したゲル構造体の簡便な作製方法の開発を目指す。なお,複合型筋組織体については,C2C12細胞等の培養細胞を用いた実験を行う予定であるが,機械的あるいは電気的刺激を付与する複合培養系の開発が必要となる可能性があるため,そのようなシステムの開発を必要に応じて検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度内に小型高温チャンバー(約30万円)の発注を検討したものの、年度内の納品が不可能とのことであったため、その分を26年度に持越した。また、消耗品の購入が想定より少々少なかった。 小型恒温チャンバーの購入予定日が変更となったものの、早急に予算を執行する予定であり、また他の消耗品等についてもほぼ想定通り執行する予定である。
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