研究課題/領域番号 |
25750173
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤田 晋一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50444104)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エクストラセルラーベシクル / エクソソーム / 両親媒性高分子 / 疎水化多糖 / カチオン性分子 |
研究概要 |
本研究では、近年、細胞間での情報伝達手段としてその存在が明らかとなり、薬物輸送担体(ドラッグキャリア)への応用が期待されている細胞分泌小胞(エクストラセルラーベシクル)への機能化両親媒性分子を用いた新しい標的指向性付与手法の開発を行う。さらには医療分野への応用に向けたエクストラセルラーベシクルドラッグデリバリーシステム(DDS)の構築を進めることを目的としている。平成25年度は、エクストラセルラーベシクル親和性を有する両親媒性高分子の設計と合成を進めた。さらには当初、次年度に計画していた培養細胞からのエクストラセルラーベシクルの分離精製手法・条件の確立と両親媒性高分子との相互作用についても検討を行った。エクストラセルラーベシクルを用いた実験については、両親媒性高分子の設計において、実際にエクストラセルラーベシクルと合成した両親媒性高分子との相互作用を検討しつつ、高分子設計を行う必要性が生じたためである。 最初に、培養細胞の培養上清から超遠心法によりエクストラセルラーベシクルの分離精製を行った。エクストラセルラーベシクルの中でも特に粒径が50-150nm程度のエクソソームと呼ばれる分画を本研究に用いた。 まず、エクストラセルラーベシクル親和性を有する両親媒性高分子両親媒性高分子として、人工細胞膜モデルとしても研究されているリポソーム表面との親和性が報告されているコレステロール置換プルラン(CHP)とエクストラセルラーベシクルの相互作用を検討したところ、その表面にCHPが物理的に吸着していることが明らかとなった。この結果から、まず細胞との親和性を向上させる分子設計として、CHPにカチオン性分子を修飾したカチオン性CHPを数種類合成した。カチオン性CHPのエクストラセルラーベシクル表面との相互作用は無修飾CHPよりも向上しており、イオン生相互作用が寄与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、エクストラセルラーベシクル親和性を有する両親媒性高分子の設計と合成を主目的として研究を開始し、その過程でエクストラセルラーベシクルと両親媒性高分子との相互作用についても同時に行うことが、高分子設計においてより効果的であるとの考えに至った。そのため当初、次年度に計画していた培養細胞からのエクストラセルラーベシクルの分離精製手法・条件の確立と両親媒性高分子との相互作用についても検討を始めた。両親媒性高分子の設計と合成においては、多糖への疎水性分子の導入およびエクストラセルラーベシクル親和性や細胞との相互作用機能を付与するためのカチオン性分子の修飾を行う等、分子設計・合成ともに計画に沿って進めることができている。細胞特異性分子としてペプチドを修飾する計画については、多糖へのペプチド修飾方法の検討を行い、そのための多糖誘導体の合成を進めているところである。また、次年度計画していたエクストラセルラーベシクルと両親媒性高分子との相互作用についても前倒して進めていることから鑑み、研究計画自体の進行度合いとしては順調である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、まず培養細胞(白血病細胞株K562およびマクロファージ様細胞株RAW264)上清からのエクストラセルラーベシクルの分離精製をスケールアップし、機能化両親媒性高分子とエクストラセルラーベシクルとの相互作用解析だけでなく、機能化エクストラセルラーベシクルと細胞との相互作用解析にも十分供給できる体制を整える。それと同時に、前年度得られた機能化両親媒性高分子の設計を基に、多糖の種類や疎水性分子の種類を拡張させ、エクストラセルラーベシクル構成膜との相互作用、特に機能化両親媒性高分子のベシクル構成膜への導入量や導入後の安定性に着目して検討を行う。また、細胞特異性を付与すべく両親媒性高分子に細胞特異性ペプチド等を修飾した細胞特異性両親媒性高分子を合成し、エクストラセルラーベシクル表面への導入を試みる。 前年度合成により得られたカチオン性両親媒性高分子を導入した機能化エクストラセルラーベシクルと細胞との相互作用については、培養細胞内への機能化エクストラセルラーベシクルの取り込み状態および取り込み量を評価する。細胞特異性ペプチド等を修飾した細胞特異性両親媒性高分子を表面に導入した機能化エクストラセルラーベシクルにおいては、まず特異細胞を用いた機能化エクストラセルラーベシクルとの相互作用を共焦点レーザー顕微鏡およびフローサイトメーターにより評価する。また、特異細胞、非特異細胞混合評価系を構築し、機能化エクストラセルラーベシクルによる特異細胞認識機能の検討を行う。この検討により高い特異細胞認識機能を有する機能化エクストラセルラーベシクルの作製方法を確立する。最終的には蛍光物質等のモデル薬物を担持した機能化エクストラセルラーベシクルによる特異細胞への薬物輸送についても検討し、薬物キャリアとしての機能評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に購入を予定していた受託合成ペプチドを研究の進行具合を鑑み、次年度に変更したためその分の費用を次年度に繰り越した。また、研究推進に必要な受託合成ペプチド量が当初よりも増加したため、受託合成ペプチド購入のために必要な費用が増加していることも理由として挙げられる。また、平成25年度の研究より、次年度予定していた細胞培養とエクストラセルラーベシクル分離精製に必要な物品類についても予想していた以上に費用が必要となることが予想されたため次年度使用額が生じた。 平成26年度は受託合成ペプチドの購入に次年度使用額の大部分を割り当てる予定である。また、細胞培養とエクストラセルラーベシクルの分離精製に使用する物品の購入額を当初予定よりも多く割り当てる。それ以外の使用計画については計画通りに進める。
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