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2013 年度 実施状況報告書

抗原とサイトカイン遺伝子の同時送達により免疫を強力活性化できるナノワクチンの創製

研究課題

研究課題/領域番号 25750177
研究種目

若手研究(B)

研究機関大阪府立大学

研究代表者

弓場 英司  大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80582296)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードpH応答性高分子 / リポソーム / 膜融合 / 樹状細胞 / 細胞質デリバリー / 遺伝子 / 細胞障害性T細胞 / ナノワクチン
研究概要

本年度は、抗原タンパク質とサイトカイン遺伝子を同時にデリバリーすることで高い免疫誘導活性を実現できる多重デリバリーナノワクチンキャリアの構築を目指した。抗原タンパク質オブアルブミン(OVA)を封入したpH応答性高分子修飾リポソームと、インターフェロンγ(IFN-γ)をコードした遺伝子を含むリポプレックスとを静電相互作用によって複合化し、ハイブリッド複合体を得た。ハイブリッド複合体は、樹状細胞株にOVAと遺伝子を同時に導入することができ、IFN-γの産生を誘導した。このハイブリッド複合体を、OVA発現がん細胞を接種したマウスに皮下投与したところ、腫瘍が縮退した。しかし、その抗腫瘍効果は、抗原封入リポソームを投与した場合とほぼ同様で、サイトカイン遺伝子導入による効果は見られなかった。そこで、抗原封入リポソームとIFN-γ遺伝子を含むリポプレックスを個別に投与したところ、著しい腫瘍の縮退効果が見られ、ほぼ全てのマウスで腫瘍が消滅した。これは、pH応答性高分子修飾リポソームがOVAを樹状細胞に効果的にデリバリーすることで、細胞性免疫が誘導され、さらにIFN-γ遺伝子が発現してIFN-γが分泌されることで、細胞性免疫が増強されたためであると考えられる。以上のことから、IFN-γの効果を発揮させるためには、抗原封入リポソームとIFN-γ遺伝子を含むリポプレックスを個別に投与することが有効であることが分かった。現在、マウス体内で起こっている免疫反応を詳細に検討しており、抗原とIFN-γ遺伝子を同時デリバリーすることによる免疫増強メカニズムを明らかにしていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度は、抗原タンパク質とサイトカイン遺伝子を同時にデリバリーできる多重デリバリーナノワクチンキャリアの構築を目指し研究を行った。抗原タンパク質を封入したpH応答性高分子修飾リポソームと、サイトカイン遺伝子を含むリポプレックスを静電相互作用によって複合化して、ハイブリッド複合体を作製することに成功し、そのキャラクタリゼーションを行った。さらに、ハイブリッド複合体を用いた抗原と遺伝子の同時デリバリー、及び遺伝子の発現についても成功した。さらに本来は平成26年度に予定していた、担がんマウスのがん免疫治療についても既に検討を行い、ハイブリッド複合体による抗腫瘍免疫の誘導も達成している。予想外にも、pH応答性高分子修飾リポソームとリポプレックスを個別に投与すると、極めて高い抗腫瘍免疫を誘導することができ、ほぼ全てのマウスでがんを完治させることに成功した。現在はその免疫誘導メカニズムについて詳細に検討しており、次年度の検討により、がん免疫誘導における、抗原タンパク質とサイトカイン遺伝子の同時デリバリーの重要性を明らかにしていく。このように、本年度で、本来平成26年度に予定していた実験も既に終了しており、当初の計画以上に進んでいる。

今後の研究の推進方策

平成25年度において抗原タンパク質とサイトカイン遺伝子を同時デリバリーできるキャリアシステムを構築し、担癌マウスの効果的な治療に成功した。しかも、実験計画では予想していなかった、抗原タンパク質とサイトカイン遺伝子個別デリバリーによる免疫誘導の著しい増強が確認された。現在は、これらの抗原キャリアの免疫誘導メカニズムを調べており、なぜハイブリッド複合体を用いて同一の細胞に抗原タンパク質とサイトカイン遺伝子を同時デリバリーするのではなく、個別にデリバリーする方が有効であったのか、を明らかにする。そして、その知見に基づいて、新たな抗原デリバリーシステムの指針を得ることを目的に研究を推進する。
各抗原キャリアの免疫誘導メカニズムの検討方法としては、(1) 脾臓における細胞傷害性T細胞の活性測定、(2) 血中の抗原特異的抗体価の測定、(3) 組織切片を用いた腫瘍組織内への細胞傷害性T細胞の浸潤の確認、を行う。①リポソームのみ、②リポプレックスのみ、③ハイブリッド複合体、④リポソームとリポプレックスの個別デリバリー、の4群について、上記(1)~(3)の検討を行うことで、抗原タンパク質とサイトカイン遺伝子の個別デリバリーによる高い抗腫瘍効果誘導のメカニズムを明らかにする。また、IFN-γ以外のサイトカインについても検討を行い、ハイブリッド複合体によって同一の細胞に抗原と遺伝子をデリバリーすることで相乗効果が得られる設計を行う。例えば、樹状細胞のリンパ節への遊走を促進するケモカイン受容体遺伝子を樹状細胞にデリバリーすることで、抗原を取り込んだ樹状細胞が効果的にリンパ節へ移行し、免疫誘導を行うように促す。

  • 研究成果

    (30件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (18件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] Nanofiber polyplex formation based on the morphology elongation by the intra-polyplex PEG crowding effect2014

    • 著者名/発表者名
      A. Ryuta, E. Yuba, A. Harada, K. Kono
    • 雑誌名

      ACS Macro Lett.

      巻: - ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Application of pH-sensitive fusogenic polymer-modified liposomes for development of mucosal vaccines2014

    • 著者名/発表者名
      S. Watarai, T. Iwase, T. Tajima, E. Yuba, K. Kono, Y. Sekiya
    • 雑誌名

      Veterinary Immunology and Immunopathology

      巻: 158 ページ: 62-72

    • DOI

      10.1016/j.vetimm.2013.05.005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dextran derivative-based pH-sensitive liposomes for cancer immunotherapy2014

    • 著者名/発表者名
      E. Yuba, N. Tajima, Y. Yoshizaki, A. Harada, H. Hayashi, K. Kono
    • 雑誌名

      Biomaterials

      巻: 35 ページ: 3091-3101

    • DOI

      10.1016/j.biomaterials.2013.12.024

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Intracellular environment-responsive stabilization of polymer vesicles formed from head-tail type polycations composed of polyamidoamine dendron and poly (L-lysine)2013

    • 著者名/発表者名
      A. Harada, R. Matsuki, S. Ichimura, E. Yuba, K. Kono
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 18 ページ: 12168-12179

    • DOI

      10.3390/molecules181012168

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The application of pH-sensitive polymer-lipids to antigen delivery for cancer immunotherapy2013

    • 著者名/発表者名
      E. Yuba, Y. Kono, A. Harada, S. Yokoyama, M. Arai, K. Kubo, K. Kono
    • 雑誌名

      Biomaterials

      巻: 34 ページ: 5711-5721

    • DOI

      10.1016/j.biomaterials.2013.04.007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] PAMAM dendrimers with oxyethylene unit-enriched surface as biocompatible temperature-sensitive dendrimers2013

    • 著者名/発表者名
      X. Li, Y. Haba, K. Ochi, E. Yuba, A. Harada, K. Kono
    • 雑誌名

      Bioconjugate Chem.

      巻: 24 ページ: 282-290

    • DOI

      10.1021/bc300190v

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Efficiency of pH-sensitive fusogenic polymer-modified liposomes as a vaccine carrier2013

    • 著者名/発表者名
      S. Watarai, T. Iwase, T. Tajima, E. Yuba, K. Kono
    • 雑誌名

      Scientific World J.

      巻: - ページ: 1-7

    • DOI

      10.1155/2013/903234

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A liposome-based antigen delivery system using pH-sensitive fusogenic polymers for cancer immunotherapy2013

    • 著者名/発表者名
      E. Yuba, A. Harada, Y. Sakanishi, S. Watarai, K. Kono
    • 雑誌名

      Biomaterials

      巻: 34 ページ: 3042-3052

    • DOI

      10.1016/j.biomaterials.2012.12.031

    • 査読あり
  • [学会発表] Design of pH-sensitive polymer-modified liposomes as an antigen delivery system for cancer immunotherapy2013

    • 著者名/発表者名
      E. Yuba, A. Harada, and K. Kono
    • 学会等名
      第35回日本バイオマテリアル学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀
    • 年月日
      20131125-20131126
  • [学会発表] pH応答機能と免疫賦活能を持つカードラン誘導体修飾リポソームによる抗原デリバリー2013

    • 著者名/発表者名
      山口 彩加、弓場 英司、林 弘志、原田 敦史、河野 健司
    • 学会等名
      第35回日本バイオマテリアル学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀
    • 年月日
      20131125-20131126
  • [学会発表] 抗原封入pH応答性リポソームとサイトカイン遺伝子内包リポプレックスの同時デリバリーによる抗腫瘍免疫の増強2013

    • 著者名/発表者名
      神田雄平、弓場 英司、原田 敦史、河野 健司
    • 学会等名
      第35回日本バイオマテリアル学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀
    • 年月日
      20131125-20131126
  • [学会発表] pH応答性高分子修飾リポソームの免疫誘導機能へのアジュバント分子導入の効果2013

    • 著者名/発表者名
      能崎優太、弓場英司、坂口奈央樹、小岩井一倫、原田敦史、河野健司
    • 学会等名
      第35回日本バイオマテリアル学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀
    • 年月日
      20131125-20131126
  • [学会発表] がん細胞由来成分とpH応答性高分子のハイブリッド化による高活性がんワクチンの構築2013

    • 著者名/発表者名
      坂野貴宣、弓場英司、原田敦史、河野健司
    • 学会等名
      第35回日本バイオマテリアル学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀
    • 年月日
      20131125-20131126
  • [学会発表] Polysaccharide-based pH-sensitive liposomes as an antigen delivery system for cancer immunotherapy2013

    • 著者名/発表者名
      E. Yuba, A. Yamaguchi, N. Tajima, H. Hayashi, A. Harada, and K. Kono
    • 学会等名
      The 4th Asian Symposium on Advanced Materials (ASAM-4)
    • 発表場所
      TAIWAN TECH
    • 年月日
      20131022-20131025
  • [学会発表] Improvement of the function of pH-sensitive polymer-modified liposome as antigen delivery system by inclusion of cationic lipid2013

    • 著者名/発表者名
      Y. Yoshizaki, E. Yuba, N. Sakaguchi, K. Koiwai, A. Harada, K. Kono
    • 学会等名
      The 4th Asian Symposium on Advanced Materials (ASAM-4)
    • 発表場所
      TAIWAN TECH
    • 年月日
      20131022-20131025
  • [学会発表] 腫瘍抗原を包埋したpH応答性高分子修飾リポソームの作製とがん免疫誘導への応用2013

    • 著者名/発表者名
      弓場英司, 坂野貴宣, 原田敦史, 河野健司
    • 学会等名
      第22回日本組織適合性学会大会
    • 発表場所
      コラッセ福島
    • 年月日
      20130914-20130916
  • [学会発表] pH応答性カードラン誘導体の合成及び抗原デリバリーシステムへの応用2013

    • 著者名/発表者名
      山口彩加、弓場英司、林弘志、原田敦史、河野健司
    • 学会等名
      第62回高分子討論会
    • 発表場所
      金沢大学
    • 年月日
      20130911-21030913
  • [学会発表] pH感受性ポリマーを用いる抗原デリバリーシステムの構築とそのがん免疫誘導機能2013

    • 著者名/発表者名
      弓場英司, 神田雄平, 山口彩加, 杉浦喜久弥, 林弘志, 原田敦史, 河野健司
    • 学会等名
      第62回高分子討論会
    • 発表場所
      金沢大学
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] がん抗原を包埋したpH応答性ポリマー修飾リポソームの免疫誘導機能:ポリマー構造の影響2013

    • 著者名/発表者名
      坂野貴宣・弓場英司・原田敦史・河野健司
    • 学会等名
      第62回高分子討論会
    • 発表場所
      金沢大学
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] pH応答性ポリグリシドール誘導体によるがん抗原包埋リポソームワクチンの 高活性化2013

    • 著者名/発表者名
      坂野 貴宣、弓場 英司, 原田 敦史, 河野 健司
    • 学会等名
      第59回高分子研究発表会(神戸)
    • 発表場所
      兵庫県民会館
    • 年月日
      20130712-20130712
  • [学会発表] ポリグリシドール誘導体を極性基とするポリマー脂質を用いたpH応答性リポソームの作製とがん免疫治療への応用2013

    • 著者名/発表者名
      弓場英司, 河野祥和, 原田敦史, 横山晶一, 新井将也, 久保和弘, 河野健司
    • 学会等名
      第29回日本DDS学会
    • 発表場所
      京都テルサ
    • 年月日
      20130704-20130705
  • [学会発表] pH応答性カードラン修飾リポソームを用いるがん免疫治療用の抗原デリバリーシステムの構築2013

    • 著者名/発表者名
      山口 彩加、弓場 英司、林 弘志、原田 敦史、河野 健司
    • 学会等名
      第29回日本DDS学会
    • 発表場所
      京都テルサ
    • 年月日
      20130704-20130705
  • [学会発表] サイトカイン遺伝子と抗原タンパク質を同時デリバリーできるハイブリッド複合体の作製とその抗腫瘍免疫誘導機能2013

    • 著者名/発表者名
      神田雄平 弓場 英司、原田 敦史、河野 健司
    • 学会等名
      第29回日本DDS学会
    • 発表場所
      京都テルサ
    • 年月日
      20130704-20130705
  • [学会発表] カチオン性脂質導入によるpH応答性高分子修飾リポソームワクチンの高機能化2013

    • 著者名/発表者名
      能崎 優太、弓場 英司、坂口 奈央樹、小岩井 一倫、原田 敦史、河野 健司
    • 学会等名
      第29回日本DDS学会
    • 発表場所
      京都テルサ
    • 年月日
      20130704-20130705
  • [学会発表] pH応答性ポリマー修飾リポソームを用いたがん免疫治療用抗原キャリアの設計2013

    • 著者名/発表者名
      弓場英司
    • 学会等名
      第13回次世代医工学研究会
    • 発表場所
      みのお山荘 風の杜
    • 年月日
      20130621-20130622
  • [学会発表] pH応答性化デキストラン修飾リポソームの調製とがん免疫治療への応用2013

    • 著者名/発表者名
      弓場英司, 田島直樹, 林弘志, 原田敦史, 河野健司
    • 学会等名
      第62回高分子学会年次大会
    • 発表場所
      京都国際会館
    • 年月日
      20130529-20130531
  • [図書] "Nasal delivery of biopharmaceuticals", In "Mucosal Delivery of Biopharmaceuticals"2014

    • 著者名/発表者名
      E. Yuba, K. Kono
    • 総ページ数
      24
    • 出版者
      Springer Science
  • [図書] がん免疫治療用抗原デリバリーシステムとしてのpH応答性ポリマー修飾リポソーム」, バイオマテリアル-生体材料-2014

    • 著者名/発表者名
      弓場英司
    • 総ページ数
      3
    • 出版者
      日本医学館
  • [図書] 「pH応答性ポリマー修飾リポソームを用いた抗原デリバリーとがん免疫治療への応用」, Major Histocompatibility Complex2013

    • 著者名/発表者名
      弓場英司
    • 総ページ数
      9
    • 出版者
      日本組織適合性学会
  • [図書] 「バイオ機能リポソームと免疫治療」, 化学2013

    • 著者名/発表者名
      弓場英司, 河野健司
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      化学同人

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公開日: 2015-05-28  

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