研究課題
本年度は、抗原タンパク質とインターフェロンγ(IFN-γ)遺伝子を同時にデリバリーすることで得られた高い抗がん活性の誘導メカニズムを調べるとともに、新たなサイトカインとして、ケモカイン(CCR7)をコードした遺伝子の同時デリバリーについて検討した。抗原タンパク質オブアルブミン(OVA)を封入したpH応答性高分子修飾リポソームと、IFN-γをコードした遺伝子を含むリポプレックスを投与した担がんマウスの腫瘍組織切片を評価したところ、リポソームとリポプレックスを個別投与した場合、多量のCD8陽性細胞がより早期から腫瘍組織内に浸潤していることが分かった。リポソームとリポプレックスの個別投与による強力な抗がん活性は、抗原封入リポソームによって誘導された細胞性免疫が、リポプレックスによって導入されたIFN-γ遺伝子の発現によって、極めて強力に活性化された結果であることを明らかにした。また、抗原提示細胞のリンパ節への遊走を促進するアプローチとして、ケモカインCCR7に着目し、CCR7をコードした遺伝子を含むリポプレックスをリポソームと併用したところ、樹状細胞の走化性が向上した。走化性の向上した樹状細胞は、マウス体内において、抗原提示を行う場所であるリンパ節に効果的に遊走し、これまでよりも強力な免疫を誘導することが期待できる。以上、本研究では、抗原を封入したpH応答性高分子修飾リポソームと、サイトカイン遺伝子の同時デリバリーによって、抗原特異的な免疫を強力に誘導するための抗原キャリアのデザインを明らかにした。今後は、抗原デリバリーシステムのさらなる高性能化を図るとともに、本システムの実用化を目指して、がん抗原ペプチドや、がん細胞のライセートを用いた免疫誘導システムの構築を検討していく。
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