本年度は、前年度に試作した縫合装置の改良と位置計測装置の評価実験を中心に行った。 1)縫合装置の改良 本年度は、前年度に開発した一次試作機の持つ3 つの機構に加え、組織の切断も含む機構を設計した。設計指針としては、組織を把持し針2 本での縫合後、針2 本の間の組織を切断し、針を補充する機構を実現する。このとき縫合跡は,切断面を挟んでその両脇に針1 本ずつが打たれる。また、一次試作機において針打ちの確認を行った際、針押し出し板を押しこむことに困難したことから、板を容易に押し出すための機構も搭載した。本装置の性能を評価するために、1mm 厚の豚肉を複数枚重ね、1~4mm 厚のそれぞれの組織に対して縫合できるか確認した。その結果、1、2mm厚の組織では縫合に成功し、3、4mm厚の組織では失敗した。これは針打ち時の組織の圧縮が十分でなく、厚い組織では針の長さが足りなくなったためと考えられる。また、組織切断用の刃で縫合と同時に切断を試みたが、うまく切断されなかった。これはの伸びに対し、刃の移動距離が少なかったためと考えられる。 2)位置計測装置の改良 前年度までに試作した、慣性センサを用いたデバイスの位置計測装置を、動物実験にて評価した。実験はブタの腹部で行い、実際の鏡視下手術と同様に気腹装置で腹壁を拳上した。計測装置の精度評価を行うために、10mmごとに機械的な印をつけた棒を挿入し、開発した位置計測装置を取り付けた術具の先端でそれらの点を順次接触していった。評価の結果、誤差は1mm以下であることが明らかとなり、光学式位置計測装置と同程度の精度であることが判明した。
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